「この前のテストも満点でね」と子供自慢するママ友。だが、子供の放った一言で絶句
毎回の独演会
習い事の待合室は、いつも一人のママの声で埋まっていた。子どもたちがレッスンを受けている間、彼女の自慢を聞かされるのが恒例だったのだ。
その日も、椅子に座るなり彼女は得意げに話し始めた。
「塾なしでもできる子だから」
「えらいですね」
「ほんと手がかからなくて助かっちゃう。この前のテストも満点でね、お宅のお子さんはどうだった?」
こちらの返事を待つより先に、また次の自慢が飛び出す。やがて話は、決まってよその子をけなす方向へと流れていった。
「まあ、できない子はどうしても遅れちゃうものね」
その一言に、周りのママたちの表情が固まる。誰も笑っていないのに、彼女だけが満足げだった。
サゲられる子どもたち
困ったのは、自慢が他の子を下げる材料になることだった。
「あの子、運動も苦手みたいだしね」
「そう、なんですかね」
「うちは何でも一番だから、つい比べちゃって」
名前こそ出さないものの、誰の子を指しているかは、その場の皆がわかっていた。当事者のママは、うつむいて唇をきゅっと結んでいる。
「比べちゃ悪いとは思うんだけどね」
そう前置きしながら、彼女は次々と他の子の苦手なところを挙げていく。隣の席のママが、見かねて私にそっとささやいた。
「誰か止めてくれないかな」
「ほんとに」
みんな同じ気持ちでいながら、波風を立てたくなくて口をつぐむ。待合室は、彼女の声だけが大きく響く窮屈な場所になっていた。
誰かが何か言い返してくれるのを、全員が心のどこかで待っていた。
本人からの一撃
その日もよその子を下げる話が佳境にさしかかった、そのときだった。レッスン室の扉が開き、彼女の息子さんが顔をのぞかせた。
「ママ、ぼくの点数の話、もうやめてって言ったじゃん。はずかしいから」
悪気のない、まっすぐな声だった。待合室が、しんと静まり返る。得意げだった彼女の顔から、すうっと表情が抜けていった。
「あら、だって……」
続きを言おうとして、言葉にならない。頬がみるみる赤くなり、とうとう真っ赤になって黙り込んだ。
周りで聞いていたママたちが、そっと目を見合わせて微笑む。誰かが、ほっとしたように肩の力を抜いた。
息子さんはきょとんとした顔で、また奥へ引っ込んでいった。あとに残ったのは、うつむいたまま動けない彼女だけだった。
「もうすぐお迎えの時間ですね」
別のママの一言で、張り詰めていた空気がやっとほどけた。それからというもの、待合室で比べ合う声は聞こえなくなった。
壁の向こうから響いてくるのは、子どもたちの音読の声だけになったのだ。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














