「悲しくてつい飲みすぎてさ」父の葬儀で終始居眠りした叔父夫婦→帰った後に家族が漏らした一言
火葬場で船を漕ぐ叔父夫婦
父の葬儀。
喪主として慌ただしく動き回る私の視界の隅で、控室の椅子に沈み込んだまま、こっくりこっくりと首を落とす夫婦がいた。
父の弟である叔父と、その妻だった。
「ちょっと、起きてよ」
叔母がつついても、叔父はまた眠りに落ちる。
火葬を待つ静かな部屋に、その二人の姿だけが浮いていた。
ことの始まりは、前夜の通夜だった。遠方から夫婦で駆けつけてくれた叔父は、席に着くなり供えの酒を手酌で飲み続け、瞬く間に泥酔した。
隣で叔母も同じ調子で盃を重ねていく。
「悲しくてつい飲みすぎてさ」
赤い顔でそう言われると、止める言葉も出てこなかった。
喪主として弔問客の応対に追われていた私には、二人を気にかける余裕もなかった。
実家に泊まる部屋はなく、近くの旅館をこちらで取り、宿泊費もこちらで持った。
送り出すとき、叔父の足元はもうおぼつかなかった。
あとで聞けば、二人は旅館に着いてからもまた飲んでいたという。
だから翌朝、迎えに行った親戚も、二人を起こすのに苦労したらしい。
帰ったあとに残ったもの
宿泊費はこちらで持ったのに、その部屋でさらに杯を重ねていたわけだ。
だから翌日の葬儀でも火葬場でも、二人のまぶたは上がらなかったのだろう。
読経の最中も、焼香の列に並びながらも、叔父はかくんかくんと首を落とし続けた。父の最後の見送りの場で、眠り込む夫婦の姿だけが、いやに目についた。
兄を亡くした悲しみで取り乱したのだ。
そう思おうとした。実の兄を送る席なのだから、何かこみ上げるものがあって当然だ。
私は何度も自分にそう言い聞かせた。
それでも、父の最後の見送りで眠り続ける二人を見ていると、胸の奥がざらついた。
私は結局、最後まで何も言わなかった。
火葬が済むと、叔父夫婦はそそくさと帰っていった。挨拶らしい挨拶もないままだった。
「さすがに、アレはないよな」
二人の車を見送ったあと、残った家族の口から、ぽつりとそんな言葉がこぼれた。
誰かが怒鳴ったわけではない。
ただ、やれやれと肩を落とすような空気が、その場を包んだ。
それから、私たちと叔父夫婦の縁は、誰が切ったわけでもなく、静かに途絶えていった。
法事の知らせを出しても返事はなく、こちらから連絡を取ることも、いつしかなくなっていた。
あの二日間さえなければ、と思うことがある。悪い人ではないと頭では分かっている。それでもあの光景だけは、何年経ってもうまく飲み込めずにいる。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














