「パパが抱っこしようね」両親の前で良いパパを演じる夫。だが、妻が明かした事実で夫がうろたえた
玄関を上がった途端の変身
義実家の玄関を上がった瞬間、夫のスイッチが切り替わるのが分かった。
それまで車の中ではスマホばかりいじっていたのに、義両親の顔を見るなり、満面の笑みで娘に手を伸ばした。
「パパが抱っこしようね」
わざとらしいほど優しい声だった。義母は目を細めて、そのやり取りを眺めている。
けれど私は知っている。この笑顔が、家の玄関をまたいだ瞬間に消えることを。
私はフルタイムで働きながら、家では育児のほとんどを一人で背負っている。夫の口ぐせは「手伝おうか」だけ。実際に動くことは、ほとんどない。
朝の準備も、夜の寝かしつけも、熱を出した夜の看病も、記憶にあるのはいつも自分の姿ばかりだった。
「いいお父さん」を演じる夫
それなのに、この家に来ると人が変わる。抱っこも、あやすのも、急に率先してやってみせるのだ。
「本当に子煩悩ねぇ、うちの息子は」義母がうれしそうに言う。
夫は照れたふりをしながら、娘を高く持ち上げてみせた。けれど、その手つきはどこかぎこちない。
娘も落ち着かないのか、身をよじって私のほうへ手を伸ばす。それでも夫は離さず、義母にアピールを続けた。
「な、いつもこうやって抱っこしてるもんな」
私に同意を求めてくる。普段、娘が泣いても寝たふりをしている人が、だ。
喉まで出かかった言葉を、私は一度だけ飲み込んだ。ここで騒いでも、角が立つだけだから。
さらりと可視化した本性
娘は結局、私の腕の中でようやく泣き止んだ。その様子を、義母はどこか不思議そうに見ていた気がする。
やがて義母が「重くない?大丈夫?」と声をかけた時、夫は明らかに腕を持て余していた。
私は娘を受け取りながら、穏やかに、でもはっきりと言った。
「生後8ヶ月で抱っこ初めてだね」
ほんの一言だった。けれど、リビングの空気が小さく揺れた。
夫の笑顔が固まる。「いや、そんなことは……」言いかけて、口ごもる。
義母がゆっくりと夫を見た。「え、あなた普段抱っこもしないの?」
「……する時は、するよ」声がどんどん小さくなっていく。
夫はそれきり、娘に手を伸ばさなくなった。取り繕う相手が、味方じゃなくなったからだ。
「家でもそのやる気、見せてほしいなぁ」
私が笑って言うと、義母もつられて笑った。夫だけが、ばつが悪そうにうつむいていた。
帰りの車で、夫は小さな声で「……ごめん」と言った。人前ではない場所での謝罪は、初めてだった。その一言のために、私は何年も待った気がした。
演技が通用したのは、たった一言が出るまでの間だけ。取り繕った仮面が剥がれた夫の顔を、私は静かに見つめていた。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














