「この猫砂、お宅のゴミよね?」ゴミ袋を家まで持ってきた住人。だが、私の明かした事実に絶句
玄関先で突き出されたゴミ袋
この町に越してきて間もない朝だった。ゴミ出しから戻り、子どもをあやしていると、玄関のチャイムが立て続けに鳴った。
出てみると、町内会の副会長を名乗る女性が、口の開いたゴミ袋を提げて立っていた。
「この猫砂、お宅のゴミよね?」
いきなり袋を鼻先に突き出され、私は面食らった。プラスチックと生ゴミが混ざった、分別違反の袋だった。
「中に、あなたの名前の封筒が入ってたの。越してきたばかりで、ルールを知らないんでしょうけど」
抱いた子どもが、鋭い声にびくりと肩を震わせた。他人のゴミを勝手に開けて、名前まで調べられたのだと分かって、腕にぞわりと鳥肌が立った。
見下すような口ぶりだった。けれど袋の中身に目をやって、私はすぐに気づいた。並んでいるのは、うちでは一度も使ったことのないものばかりだったのだ。
中身が語る本当の持ち主
「うち、猫いませんよ」
はっきりそう言うと、副会長の眉がぴくりと動いた。
「この砂も、キャットフードの空き袋も、全部うちのものじゃないです。飼っているのは、犬でも猫でもありませんから」
それから封筒を手に取って、宛名を指さした。「この宛名、うちの番地じゃないですよ。同じ苗字の、別のお宅みたいです」
「そのチラシ、この通り全部に配られてます。名前が同じなだけで、うちのゴミだと決めつけたんですか」
副会長は封筒と袋を交互に見比べ、言葉に詰まった。「え……だって、名前が……」
後ろから、ゴミ出しに来た年配の女性が声をかけた。「それ、二丁目のお宅のじゃない?あそこ、猫飼ってるでしょ」
集まった視線に、副会長はじりっと後ずさった。さっきまで袋を突き出していた勢いは、すっかり消えていた。
副会長の顔が、見る間に赤くなった。それから、絞り出すように頭を下げた。
「……確かめもしないで、ごめんなさいね」
その姿を見ても、私は「気にしないで」とは言えなかった。言えば、勝手に袋を開けたことまで許すことになる気がした。
私は袋を受け取らず、静かに玄関の戸に手をかけた。「中まで開けられて、正直、驚きました。名前を確かめる前に、まず聞いてほしかったです。もう結構です」
その後、私は町内会を抜けた。玄関先に自分のゴミ箱を置き、誰にも袋の中をのぞかれない暮らしに切り替えた。道で会う副会長は、もう私と目を合わせようとしなかった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














