「お返しないし、これどうぞ」妻の手土産を開けず姉へ渡す義母。だが、妻の一言で形勢逆転した瞬間
目の前で横流しされた品
結婚して一年目の、忘れられない出来事がある。休日に、夫の実家へ泊まりに行った時のことだ。
手土産に、少し値の張る和菓子を選んで持参した。義実家に着くと、たまたま義母の姉が遊びに来ていて、居間はにぎやかだった。
義母の姉は上品な人で、私にも「よく来てくれたわねぇ」と優しく声をかけてくれた。おかげで、はじめての泊まりがけの訪問も、思っていたよりずっと和やかに進んでいた。
私は緊張しながら、義母に包みを差し出した。
「つまらないものですが、どうぞ」
ところが義母は、包みを開けようともせず、そのまま脇に置いた。しばらくして義母の姉が帰り支度を始め、手みやげを義母に渡すと、義母は困ったような顔をした。お返しになる品が、手元にないと気づいたのだろう。
次の瞬間、義母は私が渡した和菓子をひょいと手に取り、姉に向けて差し出した。
「お返しないし、これどうぞ」
封も切らないまま、私の目の前で。びっくりして、思わず夫と顔を見合わせた。夫も、なんとも言えない苦笑いを浮かべている。
笑って受け流した一枚上手
ここで気色ばんでは、かえって私の負けだ。私はにっこり笑って、姉のほうへ向き直った。
「お口に合えばうれしいです」
まるで自分から差し上げたかのように、明るくそう言ってみせた。姉は一瞬きょとんとして、それから申し訳なさそうに笑った。
「あら、これあなたが持ってきたのに……悪いわねぇ」
横流ししたことを言い当てられた形になり、義母の顔がさっと赤くなる。
「い、いえ、いいのよ別に」と、しどろもどろに目を泳がせた。さっきまでの余裕は、どこにもない。
姉は「じゃあ半分こしましょう」と気を利かせ、その場は笑いに包まれた。慌てているのは、もう義母ひとりだけだった。
私はというと、不思議とすっきりしていた。むきになって責め立てるより、笑って受け流したほうが、ずっと大人でいられた気がしたのだ。
帰りの車で夫が「上手にかわしたな」と感心すると、私は「あのくらい、どうってことないわ」と胸を張った。
むきになって責め立てていたら、笑い者になっていたのは、きっと私のほうだ。
姉が別れ際に「あなた、いいお嫁さんね」とそっと耳打ちしてくれたのも、忘れられない。
それからも義母のマイペースは相変わらずだけれど、あの日以来、私の手土産だけは、その場できちんと開けてくれるようになった。
今では笑い話だ。あの時とっさに笑い返せた自分を、ちょっとだけ誇らしく思っている。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














