「鳴き声にいちいち文句を言うな」早朝から響く鳴き声。我慢出来ず相談した結果
睡眠を奪われ続けた日々
五十代も半ばになると、一度崩れた睡眠のリズムはなかなか元に戻らない。
そんな僕の眠りを毎朝容赦なく断ち切っていたのは、近所の犬の鳴き声だった。
判で押したように朝5時、外がまだ薄暗いうちから鳴き始める。
目を固く閉じても、その声が頭に突き刺さって、二度寝などとてもできはしなかった。
夜も同じだった。10時を回っても鳴き声は止まず、心の休まる時間がまるでない。
ただ、それでも犬を責める気にはなれなかった。
長い時間ひとりで放っておかれ、寂しさや退屈のあまり鳴いているだけなのだ。
本当の問題は、その世話を怠り続けている飼い主のほうにあった。
寝不足は、五十代の身体に容赦なくのしかかった。
日中は頭が重く、仕事の能率も目に見えて落ちていく。
しっかり眠れた朝がいつだったか、もう思い出せないほどだった。
それでも犬の声は、僕の都合などお構いなしに毎朝響き渡った。
まずは穏便に済ませようと、飼い主の家のポストへ手紙を入れて事情を伝えた。
それでも鳴き声は一向にやむ気配がない。
とうとうたまりかねて直接声をかけた僕に、飼い主は面倒くさそうにこう言い放った。
「鳴き声にいちいち文句を言うな」
匿名で相談を持ち込んだ日
その一言で、当人同士の話し合いはもう無理だと悟った。
これ以上感情をぶつけ合ったところで、事態はこじれていくだけだ。
そこで僕は、区の相談窓口の扉を叩くことにした。
正直、役所は事なかれ主義だと決めつけ、半ば期待もしていなかった。
担当者はまず、鳴き声の時間帯や頻度を細かく確認してくれた。
感情的な訴えではなく、事実を淡々と積み上げていく。
そのていねいな手つきに、僕は少しずつこの窓口を信頼し始めていた。
だが窓口の対応は、僕の予想を大きく裏切るものだった。
担当者は僕の話を親身に受け止め、名前は一切出さなくていいと約束してくれた。
近隣トラブルで角が立たないよう、あくまで匿名のまま飼い主へ働きかけてくれるという。
それから数日後、変化は静かに、しかし確かに訪れた。あれほど僕を悩ませ続けた早朝の鳴き声が、ある朝を境にぴたりとやんだのだ。
頼りにならないと思い込んでいた行政の窓口が、こじれかけた問題をすっと解きほぐしてくれた。ようやく取り戻した静かな朝の中で、僕は久しぶりに深く、深く眠ることができたのだった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














