「今日も聞こえる」耳をふさいでも気になる騒音。だが、管理会社の対応に救われた瞬間
一度目の電話では、何も変わらなかった
壁が薄い建物だということは、内見のときからうすうす分かっていた。それでも実際に暮らしてみると、想像していたより音はずっと近かった。隣の部屋で電子レンジが動く音や、水を使う音まで聞こえてくる。
隣人は帰宅時間が遅いようで、夜になると料理をしているらしい音が続いた。
ただ、生活していれば出る音でもある。気になりはしたものの、それだけなら仕方がないと思うようにしていた。
困ったのは、下の階から聞こえてくる歌声だった。
誰が歌っているのか、私は知らない。
けれど夜遅くなると、床の下からはっきり声が届く日があり、日付が変わるころまで続くこともあった。
「今日も聞こえる…」
布団の中でそうつぶやく夜が増えていった。
耳をふさいでも気になり、一度目が覚めるとなかなか眠れない。寝不足が続いたところで、私は管理会社に電話をした。
夜遅い時間に歌声が聞こえることと、建物全体に音が響きやすいことを伝えた。担当者は話を聞き、「確認して、対応を検討します」と答えた。
けれど、その後もしばらく状況は変わらなかった。夜になると同じように歌声が聞こえ、眠る時間を逃す日が何度も続いた。
二度目の相談で、全戸に注意文が配られた
そこで私は、もう一度管理会社へ電話をかけた。
「一度お伝えしたのですが、まだ夜遅くまで聞こえる日があります」
今度は、歌声が聞こえた日と時間帯を思い出せる範囲で伝えた。何時ごろ始まり、どのくらい続いたのか。担当者は確認しながら聞いてくれた。
そして最後に、こう言った。
「張り紙を、全戸のポストに入れます」
特定の部屋だけに注意するのではなく、夜間の生活音について建物全体へ知らせるという。その日の夕方、私のポストにも同じ注意文が入っていた。
内容は、夜遅い時間の音は周囲の部屋へ響くことがあるため、配慮してほしいという短いものだった。誰かを名指しする書き方ではなかったので、私は少し安心した。
その夜は、いつもより静かだった。翌日も、その次の日も、夜遅くまで続いていた歌声は聞こえなかった。
完全に無音になったわけではない。隣の部屋から水音や足音が聞こえることは変わらなかった。それでも、生活していれば出る音と、眠れなくなるほど続く音は違う。少なくとも、夜中に歌声で目を覚ますことはなくなった。
数日後、エントランスで会った住人が、ポストの近くで注意文を見ながら言った。
「最近、夜は少し静かになりましたね」
私も「そうですね」とだけ返した。誰が管理会社へ相談したのか、お互いに聞くことはなかった。
その夜、私は久しぶりに目覚ましが鳴るまで眠った。窓を開けても、いつもの歌声は聞こえない。静かな部屋で朝を迎えられるだけで、こんなに気持ちが違うのかと思った。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














