「私なんかが社長に言えることじゃないですよ」ゴルフ場で褒めながら助言していた男性。だが、急に弱気になった理由
午前のプレーを終えた四人が入ってきた
ずいぶん前、私は会員制のゴルフ場にあるレストランで働いていました。
昼になると、午前の9ホールを終えたお客様が次々と食事に入ってきます。その日、私が担当したテーブルには、年配の男性と、それより若い男性三人が座っていました。
注文を取りに行ったときから、三人は年配の男性を「社長」と呼び、しきりに午前のプレーを褒めていました。
「さっきのティーショット、よく飛んでましたね」
「あの距離をあそこまで運べるのは、さすがですよ」
一人が言うと、別の一人もすぐに続きます。年配の男性は「そうか」「今日はたまたまだよ」と短く返しながら、静かに食事をしていました。
三人とも場を盛り上げようとしていたのでしょう。仕事上の付き合いなのか、少し気を遣っているようにも見えました。
褒めるうちに、話が少し変わっていった
料理を運んでいると、そのうち一人の男性が午前のショットについて細かく話し始めました。
「ああいう場面は、力まないのが一番なんですよ。社長も今日は振りがすごく自然でした」
さらに身ぶりを交えながら、「午後もあの感じなら大丈夫ですよ」と続けます。
私は少し離れたところで水を用意しながら、その会話を聞いていました。最初は単に褒めていたはずなのに、いつの間にか男性のほうがアドバイスをするような話し方になっていたのです。
すると年配の男性が、その人の顔を見ました。
「ずいぶん詳しいな。午後、私の悪いところも見てもらおうかな」
男性はそこで初めて言葉に詰まりました。
「いや、それは…。私なんかが社長に言えることじゃないですよ」
隣の二人も、「それはさすがに」「社長のほうがずっと上手ですから」と笑いながら口を挟みます。
年配の男性は責めるでもなく、「そうか」とだけ返し、また箸を取りました。
そのあとは、四人で普通のゴルフの話になった
少し間が空いたあと、別の男性が午後のコースの話を始めました。
「午後は風が出そうですね」
そこからは、苦手なホールや天気のことなど、四人で普通に話していました。誰か一人を持ち上げ続けるような雰囲気もなくなっていました。
食事を終えた四人は、そのまま午後のプレーへ戻っていきました。
私は食器を片づけながら、さっきのやり取りを思い返していました。
三人に悪気があったわけではないと思います。相手を立てようとしているうちに、少し話が大きくなってしまっただけなのでしょう。
だからこそ、年配の男性も嫌味を言ったわけではありません。ただ、話をそのまま受け取って返しただけでした。
それでも、その一言を境に会話が自然になったのが印象に残っています。褒めること自体は悪くありませんが、無理に言葉を重ねなくても、その場は十分に楽しくなるのだと感じた出来事でした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














