「この子も同じ高校に受かったんだって」いとこの合格祝いで黙っていた僕。だが、親戚がかけてくれた一声
いとこの合格の話で、親戚みんなが盛り上がっていた
高校受験を終えたころ、祖母の誕生日に親族が集まりました。
祖母の家には、僕と同い年のいとこが住んでいました。毎日顔を合わせていることもあって、祖母はその子の学校生活や受験のことをよく知っていました。
一方、僕の家は少し離れていて、祖母に会うのは親族が集まるときが中心でした。
その日も食事をしながら近況を話していると、自然といとこの高校受験の話になりました。
「合格したんだってね。おめでとう」
親戚たちから次々に声がかかります。
僕も一緒になって「おめでとう」と言いました。
実は、僕もその少し前に高校へ合格していました。それも、いとこと同じ高校です。
ただ、わざわざ会話を止めて「僕も受かりました」と言うのも違う気がして、そのまま黙っていました。
少し寂しくなかったと言えば嘘になります。それでも、単に僕のことを知らないだけなのだろうと思っていました。
隣にいた親戚が、何気なく僕に聞いた
しばらくすると、近くに座っていた親戚が僕に声をかけました。
「そういえば、お前も受験だったよな。高校は決まったのか?」
「はい。受かりました」
「どこに?」
僕が高校の名前を答えると、その人は少し驚きました。
「なんだ、同じところじゃないか」
それから周りに聞こえる声で、こう言ったのです。
「この子も同じ高校に受かったんだって」
それまでいとこを囲んでいた親戚たちが、一斉に僕のほうを見ました。
「え、そうだったの?」
「それはおめでとう」
「二人とも同じ高校なんだね」
今度は僕にも祝いの言葉が向けられました。
祖母も少し驚いた様子で、「知らなかった。おめでとう」と言ってくれました。
誰かが僕をわざと仲間外れにしていたわけではありません。ただ、普段あまり会わない僕の近況が、そこまで伝わっていなかっただけでした。
あの一声だけは、何十年経っても覚えている
帰る前、僕は声を上げてくれた親戚にもう一度お礼を言いました。
すると、その人は「せっかく受かったんだから、言えばいいのに」と笑いました。
当時の僕には、自分から話の中心に入っていく勇気がありませんでした。だからこそ、何気なく気づいて声をかけてくれたことが、うれしかったのだと思います。
あれから何十年も経ちましたが、あの日のことは今でも覚えています。
大勢で集まっていると、話している人ばかりに目が向きがちです。僕自身も、誰かが黙っているときには、少し気にかけられる人でいたいと思っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














