「お父さんお母さんは難しいから、1歳までにじいじと言おうね」初孫に何度も話しかける義父。だが、私が笑いにくかったワケ
湯呑みを置いた義母が、思い出したように笑った
年始の義実家は、朝から人の出入りが続いていました。
玄関には靴が並び、台所からは出汁のにおいがしています。前年に産んだ子を連れての帰省で、義両親は初孫の顔を見るたびに手を止めました。
ただ、そのころの私は少し気が張っていました。子どものことを言われるたび、「こうしたほうがいい」という話につながるのではないかと、身構えていたのです。
午前中、義父が子どもを抱きながら言いました。
「お父さんお母さんは難しいから、1歳までにじいじと言おうね」
冗談なのだろうとは思いました。それでも、どう返せばいいのか分からず、私は曖昧に笑うだけでした。
昼になってみんなで食卓を囲んでいると、義母が湯呑みを置き、思い出したように笑いました。
「うちは、ばあばのほうが先だったよ」
夫が赤ん坊だったころの話でした。最初に「ばあば」と呼んだのは夫の祖母で、義父が自分を「パパ」と呼んでもらえたのは、そのあとだったそうです。
義父は昔から、早く呼んでもらいたかったらしい
「毎晩、パパって言わせようとしてね」
義母は笑いながら、当時の義父の様子を話します。赤ん坊だった夫のそばで、何度も「パパ」と繰り返していたのだそうです。
「でも、ばあばが先。パパはあとだったのよ」
義父は少し照れたように湯呑みを持ち上げました。
「そんなこともあったな」
夫も初めて聞いたらしく、箸を止めて笑います。
「俺、そんな順番だったんだ」
そこで私は、朝の義父の言葉を思い出しました。
自分たちより先に「じいじ」と言わせたい、という意味だと受け取って少し警戒していましたが、どうやら義父は三十年前から変わっていないだけのようでした。赤ん坊に早く自分を呼んでもらいたくて、つい何度も話しかけてしまう人なのです。
もちろん、だから何を言われても気にならないわけではありません。それでも、義父なりの理由が分かると、朝に感じた引っかかりは少し小さくなりました。
帰りの車では、後ろの席で子どもが眠っていました。
この子が最初に誰を呼ぶのかは、まだ誰にも分かりません。きっと義父はこれからも「じいじ」と話しかけるのでしょう。
私は眠っている子どもの顔を見ながら、その日が来るまで好きなだけ呼びかけてもらえばいいか、と思えるようになっていました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














