「これも、もらっていい?」無料のまかないを誰より爆食した同僚。だが、同僚が突然退職したワケ
高給取り自慢のわりに、まかないを山盛りにする手
幼稚園の給食室でパートをしている私には、ひとつ気になっていることがありました。
同じ職場のママさんのひとりが、夫の高給ぶりをやたらと口にするのです。
「うちの夫は銀行員でね、私の給料なんか生活費にいらないの」
休憩室で誰かが家計の話をすると、決まってそう胸を張ります。
「子ども医療費の受給者証も、うちは年収で対象外になっちゃって」
みんなが返事に困って黙り込んでも、彼女はどこ吹く風でした。
そんな彼女ですが、ひとつ不思議なところがありました。
調理の余りを分け合うまかないの時間になると、誰より早く前に出てくるのです。
「これも、もらっていい?」
大きな保存容器に、おかずを山盛りにして詰めていきます。
無料で分けてもらっているのに、ごちそうさまの一言すらありません。
「生活費にいらない」と言うはずのお給料の人が、なぜ無料のまかないにここまで執着するのか。
その背中を見るたび、私の中で小さな引っかかりが少しずつ大きくなっていきました。
社員が制度をやめた翌日、彼女が放った退職理由
ある日、私はとうとう正社員さんに思い切って相談しました。
「あの、まかないのことで、少しお話が……」
事情を聞いた社員さんは、深くうなずいて言いました。
「実はね、私もずっと見かねてたの。度が過ぎてるから、まかない制度、やめましょう」
翌朝、休憩室に制度終了のお知らせが貼られました。
それを見つけた彼女の動きが、ぴたりと止まります。
「ちょっと、なんでですか。急にそんな」
けれど社員さんが静かに目を向けると、彼女はそれ以上、言葉を続けられませんでした。
「みんなで決めたことなので」
その一言に、彼女の頬がさっと強張ります。
唇を結んだまま、彼女は逃げるように調理場へ消えていきます。
そして次の日、職場に一本の電話が入りました。
「持病の腰の爆弾が…」
そう告げて、彼女は退職を願い出たのです。
あれほど元気にまかないを運んでいた腰の不調を、誰も鵜呑みにはしませんでした。
「タイミング、分かりやすすぎ」
「無料でもらえなくなったから、だよね」
ママさんたちの囁きに、私は黙ってうなずきました。
あんなに自慢していた銀行員のご主人の話も、もう誰の口にも上りません。
マウントを取る人がいなくなった給食室は、見違えるほど穏やかです。
「ねえ、これ味見してみて。今日のだし、いい感じ」
「ほんとだ、おいしい」
声をかけ合いながら包丁を握る朝が、ようやく戻ってきました。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














