「そこ、もう少しきちんとしなさい」法事の席で続く伯母の小言。だが、年上の親戚が一言で止めた瞬間
受付で声をかけてきた伯母
祖父の七回忌で、久しぶりに親戚が集まった日のことです。
私は玄関脇の受付で袱紗から香典を取り出し、両手で従兄に渡しました。名前を書いて一礼し、その場を離れようとしたときでした。
近くにいた伯母が、私の背中に小さな声をかけてきました。
「そこ、もう少しきちんとしなさい」
振り返ると、伯母は私の喪服の襟元を見ています。
どうやら少し内側に折れていたらしく、私は慌てて手で整えました。
「ありがとうございます」
そのときは、それだけのことだと思っていました。
食事中も続いた小言
読経が終わり、親族で食事を囲み始めると、伯母がまた私に声をかけてきました。
「さっきも言ったけど、こういう日は身なりをちゃんとしておかないとね」
「はい、気をつけます」
ところが、話はそこで終わりませんでした。
「最近の若い人は、そういうことを教わらないのかしら」
さらに、挨拶の仕方や座り方、食事の席での振る舞いまで話が広がっていきます。
最初は相づちを打っていた私も、次第に何と返せばいいのか分からなくなりました。
向かいに座っていた従姉は黙って煮物をつつき、叔父も気まずそうに湯呑みに手を伸ばしています。
伯母としては、私に恥をかかせないよう教えてくれていたのかもしれません。
ただ、せっかく祖父を偲んで集まった席なのに、いつの間にか食卓全体が静かになっていました。
大叔母が口にした一言
そのとき、上座に座っていた祖父の妹にあたる大叔母が、伯母に向かって穏やかに言いました。
「もうそのくらいでええんじゃない。今日は兄さんの話をしようや」
叱るような口調ではありませんでした。
伯母は一瞬黙ると、「まあ、それもそうね」と箸を持ち直しました。
すると大叔母が遺影を見ながら笑います。
「兄さんなんて、お経が長いと昔からすぐウトウトしとったけどなあ」
叔父が吹き出し、従兄も「そういえば昔も」と祖父の思い出を話し始めました。
止まっていた会話が少しずつ戻り、伯母もいつの間にか昔話の輪に加わっていました。
帰り際、大叔母が私のそばに来て、小さな声で言いました。
「襟なんて直せば済むことや。ちゃんと来てくれたことのほうが大事やから」
私はその言葉に、ようやく肩の力が抜けました。
作法を大切にすることも必要なのでしょう。でも、それ以上に大事なものがあることを、大叔母の一言に教えてもらった気がしました。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














