「私だって妹なのよ!」亡くなった祖母にすがろうとした大叔母。火葬場で伯母が最後まで譲らなかったこと
久しぶりに来た大叔母は、祖母の顔を見るなり泣き出した
祖母は葬儀までのあいだ、家の仏間に寝かされていました。
着物を着せ、薄く化粧をし、見えない位置にはドライアイスが入れてあります。
祖母とずっと同居していた伯母は、何度も髪や襟元を整えていました。
私は孫にあたりますが、三十代になった今まで、伯母が祖母の髪をあんなふうに優しく撫でる姿を見た記憶がありません。
訃報を聞いた人が訪れるたび、伯母は玄関まで出て頭を下げていました。
「きれいなお顔ですね。眠ってるみたい」
そう言われると、伯母は少しだけ笑って、
「昨日ね、髪だけは私が整えたんです。母、こういうところ気にする人だったから」
と答えていました。
昼を過ぎたころ、玄関から慌ただしい足音が聞こえました。入ってきたのは祖母の妹でした。近所に住んでいましたが、この何年かはほとんど付き合いがありませんでした。
大叔母は仏間へ入るなり、祖母の顔を見て声を上げました。
「姉ちゃん…ちょっと、嘘でしょう。ねえ、起きてよ」
そのまま祖母の肩へ手を伸ばしました。
「待って、そんなに揺らさないで」
父が声をかけ、伯母と私もそばへ寄りましたが、大叔母は聞こえていないようでした。
「だって、こんなの…急すぎるじゃない。姉ちゃん、ねえ…」
着物の襟がずれ、布団の下に入れてあったドライアイスまで畳に落ちました。
伯母の表情が変わりました。
「お願いですから、もう手を離してください。母の身体に無理をさせたくないんです」
「いいでしょう。私だって妹なのよ!」
伯母はしばらく何も言いませんでした。
そのあと廊下へ出て連絡を入れ、ほどなくして大叔母の息子夫婦が迎えに来ました。
伯母は祖母の襟を直しながら、静かに言いました。
「今日はもう、これ以上は…すみません。連れて帰ってあげてください」
大叔母はまだ何か言いたそうでしたが、息子夫婦に支えられるようにして家を出ていきました。
火葬場で、父が大叔母の前に立った
葬儀を終え、火葬場へ移ったあと、大叔母も親族の列に加わっていました。
最後のお別れで棺の蓋が開くと、大叔母はまた前へ出ようとしました。
「お願い。今度こそ、ちょっとだけ触らせて」
父がすぐに前へ回り込みました。
「気持ちは分かる」
「だって、これで最後なのよ」
大叔母の声は震えていました。
そのとき、棺の横にいた伯母が顔を上げました。
「母に触れるのは、最後は私。これだけは譲れない」
大叔母が一歩動くと、伯母はもう一度言いました。
「お願い。母に触れるのは、最後は私にさせて」
それでも大叔母が祖母を見つめたまま立っていると、伯母は声を震わせながら三度目を口にしました。
「母に触れるのは、最後は私。…お願いだから」
そこで大叔母は動くのをやめました。
息子夫婦がそばへ寄ると、小さくうなずいて列の後ろへ戻りました。
係の人が静かに棺の蓋を閉じます。伯母は最後まで祖母のそばに立ち、蓋にそっと手を添えていました。
あの日、私は初めて、長く一緒に暮らしてきた人を見送る側にも、簡単には言葉にできない思いがあるのだと感じました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














