tend Editorial Team

2026.09.09(Wed)

「気にしなくていい、と後ろの2人から声をかけられた」2つに分かれていた列の前で、私が聞いた一言

「普通は後ろに行きません?」2つに分かれた列で責められた私。だが、係の人に確認すると返ってきた言葉

誰も決めていない列が、2つできていた

イベントの集合場所が館内放送で流れたのは、遊び場に入って一時間ほど経ったころだった。

私は娘を呼び、放送で案内された場所へ向かった。

同じ方向へ歩く親子が何組かいて、娘はその流れの中を進んでいた。

前には一人の男性が歩いていて、そのまま男性の後ろに並ぶ形になった。

集合場所の前には、反対側の通路から来た人たちも集まっていた。

案内板には集合場所しか書かれておらず、どちら側から並ぶのかは分からない。

気づけば二方向からできた列がそのまま伸びていた。

私が娘の横に立ったところで、後ろから少し強い声がした。

「すみません。今、前に入りましたよね?」

振り返ると、先ほど娘の前を歩いていた男性の連れらしい女性が、幼い子どもの手を引いて立っていた。

「え?あ、いえ。この子、こっちの通路から来て、そのまま並んだんです」

私が答えると、女性は眉を寄せた。

「でも、私たちはずっと向こうから並んでたんですけど」

「そうだったんですね。ただ、こっち側にも列ができていたみたいで…」

「じゃあ、こっちが割り込んだってことですか?」

思っていなかった返しに、一瞬言葉が詰まった。

「そういう意味じゃないです。どっちから並ぶのか、決まってなかったみたいなので」

すると女性は、小さくため息をついた。

「みんな並んでるんだから、普通は後ろに行きません?」

周囲からちらちらと視線が向けられる。娘はさっきまで楽しそうにしていたのに、私の服の裾をぎゅっとつかんで下を向いてしまった。

「じゃあ、係の人に聞いてきます」

言い返したい気持ちはあった。

ただ、娘の前で言い合いを続けるのも嫌だった。

「分かりました。じゃあ、係の人に聞いてきますね」

私は娘の手を握り、そのまま一緒に列を離れた。

受付にいた係の人へ事情を話す。

「すみません。列がこっちと向こうで2つに分かれていたみたいなんですけど、私たちは後ろに並び直したほうがいいですか?」

係の人は列のほうを見て、少し困ったように眉を上げた。

「ああ、すみません。案内が分かりにくかったですね。どちらの通路から来ても大丈夫です。今いらっしゃる位置のままでお待ちください」

「じゃあ、並び直さなくていいんですね?」

「はい、大丈夫です」

ほっとして娘と列へ戻ると、近くにいた二人の女性がこちらを見た。

一人が少し笑って、

「大丈夫だって。気にしなくていいよ」

と声をかけてくれた。

もう一人も、

「うん。私もどっちが列なのか分かってなかったし。ちゃんと聞いてきたんだから、それでいいよ」

と言ってくれた。

張りつめていたものが少しゆるんで、「ありがとうございます」と思わず頭を下げた。

先ほどの女性は黙ったままこちらを見ていた。

すると連れの男性が、少し気まずそうに女性へ声をかけた。

「もういいって。俺もこっちから普通に来ただけだから」

「…そう?」

「うん。どっちから並ぶとか、俺も知らなかったし」

女性はそれ以上何も言わず、子どもの手を握り直した。

やがて係の人が扉の前に立ち、順番に子どもたちの名前を呼び始めた。

帰り道で娘に聞かれたこと

イベントが終わり、帰る途中で娘が私の手を引いた。

「ママ。さっきの人、怒ってたの?」

少し考えてから、私は答えた。

「うーん。自分たちが先に並んでたと思ってたんじゃないかな。だから、びっくりしたのかも」

「ママ、悪いことした?」

その言葉には胸が少し痛んだ。

「してないよ。分からなかったから、ちゃんと係の人に聞いたでしょ。大丈夫だったよ」

娘は少し安心したようにうなずいた。

「後ろのおばちゃんたちも、気にしなくていいって言ってたね」

「うん。言ってくれたね」

「ありがとうって言えばよかったな」

そう言うと、娘は遊び場でもらったシールを袋から取り出し、一枚ずつ数え始めた。

列の作り方が最初から分かっていれば、たぶん何も起きなかった出来事だった。それでも、人前で責められたときに一人ではないと思えたあの一言は、今でもよく覚えている。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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