「普通は後ろに行きません?」2つに分かれた列で責められた私。だが、係の人に確認すると返ってきた言葉
誰も決めていない列が、2つできていた
イベントの集合場所が館内放送で流れたのは、遊び場に入って一時間ほど経ったころだった。
私は娘を呼び、放送で案内された場所へ向かった。
同じ方向へ歩く親子が何組かいて、娘はその流れの中を進んでいた。
前には一人の男性が歩いていて、そのまま男性の後ろに並ぶ形になった。
集合場所の前には、反対側の通路から来た人たちも集まっていた。
案内板には集合場所しか書かれておらず、どちら側から並ぶのかは分からない。
気づけば二方向からできた列がそのまま伸びていた。
私が娘の横に立ったところで、後ろから少し強い声がした。
「すみません。今、前に入りましたよね?」
振り返ると、先ほど娘の前を歩いていた男性の連れらしい女性が、幼い子どもの手を引いて立っていた。
「え?あ、いえ。この子、こっちの通路から来て、そのまま並んだんです」
私が答えると、女性は眉を寄せた。
「でも、私たちはずっと向こうから並んでたんですけど」
「そうだったんですね。ただ、こっち側にも列ができていたみたいで…」
「じゃあ、こっちが割り込んだってことですか?」
思っていなかった返しに、一瞬言葉が詰まった。
「そういう意味じゃないです。どっちから並ぶのか、決まってなかったみたいなので」
すると女性は、小さくため息をついた。
「みんな並んでるんだから、普通は後ろに行きません?」
周囲からちらちらと視線が向けられる。娘はさっきまで楽しそうにしていたのに、私の服の裾をぎゅっとつかんで下を向いてしまった。
「じゃあ、係の人に聞いてきます」
言い返したい気持ちはあった。
ただ、娘の前で言い合いを続けるのも嫌だった。
「分かりました。じゃあ、係の人に聞いてきますね」
私は娘の手を握り、そのまま一緒に列を離れた。
受付にいた係の人へ事情を話す。
「すみません。列がこっちと向こうで2つに分かれていたみたいなんですけど、私たちは後ろに並び直したほうがいいですか?」
係の人は列のほうを見て、少し困ったように眉を上げた。
「ああ、すみません。案内が分かりにくかったですね。どちらの通路から来ても大丈夫です。今いらっしゃる位置のままでお待ちください」
「じゃあ、並び直さなくていいんですね?」
「はい、大丈夫です」
ほっとして娘と列へ戻ると、近くにいた二人の女性がこちらを見た。
一人が少し笑って、
「大丈夫だって。気にしなくていいよ」
と声をかけてくれた。
もう一人も、
「うん。私もどっちが列なのか分かってなかったし。ちゃんと聞いてきたんだから、それでいいよ」
と言ってくれた。
張りつめていたものが少しゆるんで、「ありがとうございます」と思わず頭を下げた。
先ほどの女性は黙ったままこちらを見ていた。
すると連れの男性が、少し気まずそうに女性へ声をかけた。
「もういいって。俺もこっちから普通に来ただけだから」
「…そう?」
「うん。どっちから並ぶとか、俺も知らなかったし」
女性はそれ以上何も言わず、子どもの手を握り直した。
やがて係の人が扉の前に立ち、順番に子どもたちの名前を呼び始めた。
帰り道で娘に聞かれたこと
イベントが終わり、帰る途中で娘が私の手を引いた。
「ママ。さっきの人、怒ってたの?」
少し考えてから、私は答えた。
「うーん。自分たちが先に並んでたと思ってたんじゃないかな。だから、びっくりしたのかも」
「ママ、悪いことした?」
その言葉には胸が少し痛んだ。
「してないよ。分からなかったから、ちゃんと係の人に聞いたでしょ。大丈夫だったよ」
娘は少し安心したようにうなずいた。
「後ろのおばちゃんたちも、気にしなくていいって言ってたね」
「うん。言ってくれたね」
「ありがとうって言えばよかったな」
そう言うと、娘は遊び場でもらったシールを袋から取り出し、一枚ずつ数え始めた。
列の作り方が最初から分かっていれば、たぶん何も起きなかった出来事だった。それでも、人前で責められたときに一人ではないと思えたあの一言は、今でもよく覚えている。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














