「おそろいにしたかったんです」机に置かれたカーディガン。人懐っこい後輩の行動に恐怖したワケ
気づけば、そろっている
同じ部署に配属された後輩は、最初はただ明るくて話しやすい人だった。
距離が近いのも、人懐っこさの裏返しだと思っていた。むしろ、こんなに懐いてくれてありがたいくらいに感じていた。
ところが、いつからか私の持ち物が、次々と彼女の手元にも現れるようになった。
ハンドクリーム、アクセサリー、小物のひとつひとつ。私が新しく使い始めたものを、決まって少し遅れて、彼女がそっくりそろえてくる。最初は偶然だと思っていたが、回を重ねるほど、その一致は偶然では説明できなくなっていった。
決定的だったのは、私が誰にも話していないはずの悩みを、長い文面で「分かるよ」と送ってきたことだ。
どうやら、同僚との雑談を遠くで聞いていたらしい。拾い集めた断片をつなぎ、私の心の内をすべて見透かしたように語ってくる。
理解者のような顔をされるたび、背中に冷たいものが走った。
ある晩、私が眠れないままに短い文面を書き込むと、数分後にひと言だけ届いた。
「深夜にあなたのことを考えてました」
上司が動いた朝
時刻は、ちょうど0時を回ったところだった。
その文面を見た瞬間、指先から血の気が引いていくのが分かった。
そして翌朝、出社した私の机の上には、前日に私が着ていた服と同じ色のカーディガンが、きちんとたたんで置かれていた。
「おそろいにしたかったんです」
彼女は、屈託のない笑顔でそう言った。
害はないのかもしれない。悪気もないのだろう。それでも、私の一日を一歩後ろからなぞり続けるその執着に、心は確実にすり減っていた。
何を着るか、何を持つか、その一つひとつを見られていると思うと、身支度をするだけで気が重くなる。このまま我慢を続ければ、いつか自分のほうが壊れてしまう。
そう感じた私は、迷った末に、上司へすべてを話すことにした。
上司は、私の話を一つひとつ丁寧に、途中でさえぎることなく聞いてくれた。そして最後に、「よく言ってくれた」と静かにうなずいた。
その日のうちに席が調整され、翌週には担当も分けられた。動いてくれる人がいる。それだけで、これほど心強いものかと思った。
顔を合わせる時間が減っていくと、あの重い文面も、そろえられていく持ち物も、潮が引くように静かに遠ざかっていった。
一人で抱え込まず、勇気を出して声を上げたことが、結局は自分を守る一番の近道だった。打ち明けたあの朝を境に、私の毎日は少しずつ、まぎれもなく私だけのものへと戻っていった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














