「あの人って、よく手を握ってきません?」何度も手を握る女性。熱で休んだ朝、職場の女性が玄関に立っていた
その日だけで、手を握られたのは4度目だった
私がある職場で働き始めたのは、三十年ほど前のことです。
二十代の終わりで、非常勤として働いていました。
同じ職場には、私より二十歳ほど年上の女性がいました。
明るく話しかけてくれる人でしたが、なぜか私と話すときによく手を握るのです。
朝、顔を合わせれば、
「おはよう。今日もよろしくね」
そう言いながら、ぎゅっと手を握られます。
仕事の合間にも同じことがあり、帰り際にも、
「今日もお疲れさま。疲れたでしょう?」
と手を取られました。
悪意があるようには見えません。それでも、さすがに距離が近いように感じました。
その日だけで、手を握られたのは4度目でした。
着替えながら、同期の男性に小声で聞いてみました。
「あの人って、よく手を握ってきません?」
「ああ、俺も前はあったよ」
「やっぱりそうなんですね…」
「食事にも何回か誘われたけど、断ってたら、そのうち言われなくなったよ」
私だけではないと分かって少し安心しましたが、なんとなく引っかかる気持ちは残りました。
休んだ朝、玄関の前にいたのは
それから半月ほどたったころ、私は熱を出して二日続けて仕事を休みました。
二日目の朝、玄関のチャイムが鳴りました。
宅配便だと思い、重い体を起こして扉を開けると、そこに立っていたのはあの女性でした。
「大丈夫?心配になって来ちゃった」
一瞬、何を言われているのか分かりませんでした。
「え…どうしてここに?」
「顔だけ見たら帰るから。ちゃんと食べてる?」
「でも私、住所、教えたことないですよね」
そう聞いても、女性ははっきりとは答えませんでした。
そしていつものように私の手を取り、自分が信じている教えについて話し始めたのです。
「こういうときだからこそ、少し読んでみてほしいの」
手には折りたたんだ紙を持っていました。
「すみません……今日は本当にしんどいので、もう休ませてください」
「少しだけでも」
「いえ、大丈夫です。すみません」
私は紙を受け取らず、扉を閉めました。
鍵をかけてからも、しばらく玄関の前を離れられませんでした。
次に出勤すると、女性は何事もなかったように「もう熱、大丈夫?」と声をかけてきました。そしてまた手を伸ばしてきたので、私は反射的に一歩下がりました。
あの朝、どうやって私の家を知ったのか。
結局、その理由は今も分かりません。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














