tend Editorial Team

2026.09.09(Wed)

「若いんだから立てるだろう!」通学中に優先席に座っていた女性を責める男性。だが、別の男性の一言で空気が一変

「若いんだから立てるだろう!」通学中に優先席に座っていた女性を責める男性。だが、別の男性の一言で空気が一変

同じ言葉を、二度ぶつけた声

朝の電車がいちばん混む時間だった。

私は優先席の近くの席に座っていて、斜め前には、通学途中らしい若い女性が優先席に腰かけていた。

膝の上に大きな鞄を抱え、顔色はあまりよくない。ときどき目を閉じて、じっと揺れに耐えているように見えた。

途中の駅から乗ってきた男性が、その女性の前で足を止めた。

少しのあいだ女性を見下ろしていたかと思うと、急に声を上げた。

「立っている人がいるのに座るのか」

女性は驚いて顔を上げた。

「え…私ですか?」

「そうだよ。立ってる人がこんなにいるだろ。立っている人がいるのに座るのか」

同じ言葉を二度言われ、女性は困ったように周囲を見た。

「すみません。朝からちょっと具合が悪くて…」

「だからって、若いんだから立てるだろう!」

「でも、本当に気分が悪くて…」

最後のほうは、ほとんど聞こえない声だった。

女性は鞄の持ち手を強く握り、そのまま立とうとするように少し腰を浮かせた。

私は「そのままでいいんじゃないですか」と言いたかった。

でも、突然始まったやり取りに驚いてしまい、すぐには声が出なかった。

席を譲られても、男性は座らなかった

そのとき、私の隣に座っていた男性が文庫本を閉じた。

そして立ち上がると、男性に声をかけた。

「座りたいんでしたら、ここどうぞ」

男性は、一瞬ぽかんとした顔をした。

「いや、俺は別に座りたいわけじゃない」

「そうなんですか」

「ただ、若い人が座ってて、立ってる人がいるから言っただけだよ」

先ほどまでより、声はずっと小さくなっていた。

席を立った男性は、それ以上何も言わなかった。

ただ空いた座席を軽く示してから、吊り革につかまった。

「俺はいいって」

男性はもう一度そう言うと、窓のほうを向いた。

車内には、なんとも言えない気まずさだけが残った。

次の駅に着くと、男性は扉が開くのを待つように前へ進み、そのままホームへ降りていった。

結局、譲られた席には一度も座らなかった。

電車が動き出してから、若い女性が吊り革につかまっている男性を見上げた。

「あの…ありがとうございました」

「いやいや。具合悪いんでしょ。無理して立たなくていいですよ」

「はい…助かりました」

女性はようやく少し肩の力を抜き、もう一度座席に深く腰を下ろした。

事情は、見ただけでは分からないこともある。それでも、あのとき二度も同じ言葉を向けられていた女性の困った顔は、今でもときどき思い出す。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

RANKING

OTHER ARTICLES

NEW 2026.09.09(Wed)

「食べ終わるまで待ってるから」異常な執着を見せてきた高校の同級生。20歳の私に突然届いた長文に恐怖
tend Editorial Team

NEW 2026.09.09(Wed)

「一人だと寂しいでしょう」玄関前に野菜を置き続けた男性。だが、男性の発言を機に彼と同棲を始めた
tend Editorial Team

NEW 2026.09.09(Wed)

「あの人って、よく手を握ってきません?」何度も手を握る女性。熱で休んだ朝、職場の女性が玄関に立っていた
tend Editorial Team

RECOMMEND

2026.08.24(Mon)

「ベランダにまで、においが漂ってきます」上の階から続く物音に悩んだ私が、管理会社へ相談した結果
tend Editorial Team

2025.12.19(Fri)

「黙っていてほしい」「批判だけなら誰にでも出来る」と辛辣な声も。れいわ山本代表が高市政権の補正予算を酷評
tend Editorial Team

2026.07.21(Tue)

「働いてやってるのは、誰だと思ってる」母に全部を押し付け続けた父。だが、最後に待っていた自業自得の結末とは
tend Editorial Team