「君、新人さんなの?使えないねー!」居酒屋で「いつもの」を繰り返す男性客。先輩が同じ質問をした途端、返事に詰まった
メニューも見ずに注文した男性客
初めて夜の飲食店でアルバイトをした日のことです。
働き始めたのは、カウンターのある小さな居酒屋。
エプロンを締めた私は、その夜初めて一人で注文を取ることになりました。
最初に声をかけたのは、カウンター席で腕を組んでいた40代くらいの男性でした。
私はカウンターの外側の通路に立ち、注文票を手にしました。
「いつものやつ、頼むわ!」
男性はメニューを見ずに片手を上げます。何度も来ているような口ぶりでしたが、私はその男性を見るのも初めて。何を頼まれているのか分かりません。
「すみません。『いつもの』が分からなくて……。メニューから選んでいただけますか?」
「だから、いつものだって言ってるだろう」
「すみません、どれでしょうか…」
男性は眉をひそめ、カウンターから身を乗り出しました。
「君、新人さんなの?使えないねー!」
周りの席にも聞こえる大きな声でした。視線を感じて顔が熱くなり、私は注文票を持ったまま言葉が出ませんでした。
先輩も「いつもの」が分からなかった
ちょうどそのとき、奥の厨房から先輩が出てきました。
長くこの店で働き、常連のお客さんの好みもよく覚えている人です。
先輩は私の隣に立つと、男性に笑顔で声をかけました。
「いらっしゃいませ。いつものって、どれでしたっけ?」
私が尋ねたのと、ほとんど同じことです。
それでも、先輩は慌てる様子もなく返事を待っていました。
「えっ、いや、その…」
さっきまで強気だった男性は、急に口ごもりました。
先輩とメニューを交互に見ています。
すると、カウンターにいたほかのお客さんから小さな笑い声が聞こえました。
「あの人、ここで見たことあったっけ」
端の席のお客さんが隣の人にそうささやくのも、私のいる場所まで聞こえてきました。
男性は顔を赤くしてメニューを引き寄せ、二か所を指さしました。
「……これと、これ」
先輩はその注文を書き留め、私に小さく目配せしました。私が注文を厨房へ伝えに向かうとき、男性はまだメニューに目を落としたままでした。
その夜の帰り際、エプロンを外していた先輩が言いました。
「よく来るお客さんの注文なら、だいたい覚えてるんだけどね。あの人の『いつもの』は、私も分からなかったよ」
その言葉を聞いて、ようやく肩の力が抜けました。私だけが知らなかったわけではなかったのです。
翌日から私は、常連のお客さんの顔と注文をノートに書き、少しずつ覚えるようになりました。分からない注文は曖昧に受けず、確認していいのだと感じた出来事です。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














