「だったら早く言えよ」せいろの使い方を説明する店員に怒鳴った男性客。だが、隣にいた妻が箱の説明を読み上げると
はやりのせいろを並べた売り場で
家具と雑貨の店で働いていたころ、蒸し料理に使うせいろが大はやりしていました。
店でもキッチン用品の売り場に専用の棚をつくり、木製のせいろや、鍋とせいろがセットになった商品を目立つように並べていました。
ある日の昼、私が売り場で値札を直していると、50代くらいの男性客が妻と一緒にやって来ました。
男性はせいろの箱を手に取ってしばらく眺め、棚に戻すと私を呼び止めました。
「ちょっと、このせいろってIHに直接置けるの?」
「いえ、木製のせいろは直接置けないんです。鍋の上に乗せて使うものなので」
そう説明すると、男性は不満そうに棚を見回しました。
「じゃあ、IHじゃ使えないってこと?」
「いえ、IH対応の鍋を使っていただければ大丈夫ですよ。こちらには鍋とセットになった商品も…」
私が棚の商品を案内しようとすると、男性は最後まで聞かずに声を荒らげました。
「だったら早く言えよ!」
突然の大声に、近くで食器を見ていた客もこちらを振り向きました。
私は驚いて言葉に詰まってしまいました。
聞かれたことに順番に答えていただけなのに、どうして怒鳴られなければならないのでしょうか。
それでも接客中なので言い返すわけにもいかず、私は困ってしまいました。
妻が読み上げた箱の説明
すると、それまで隣で黙っていた妻が口を開きました。
「ちょっと、今説明してくれてたでしょ」
「最初にそう言ってくれればいいのに」
男性はまだ不満そうです。
妻は小さくため息をつくと、棚からせいろの箱を一つ取りました。先ほど男性が手に取っていた箱です。
そして、箱の側面に書かれた説明を指でなぞりながら読み上げました。
「ほら、『鍋の上に乗せてお使いください』って書いてあるよ。さっきこの箱見てたよね?」
男性は妻の手元に目を向けました。
「店員さんも同じこと言ってるじゃない。ちゃんと話を聞きなよ」
そう言われると、男性は何か言いかけましたが、結局何も言いませんでした。
妻は隣に並んでいたセット商品にも目を向けました。
「こっちなら鍋もついてるんだね。IHに対応してるか確認すればいいじゃない」
男性は黙ったまま、鍋とせいろのセットの箱を手に取りました。
妻が箱の表示を確認すると、付属の鍋はIH対応と書かれていました。
男性は気まずそうに視線を落とし、何も言い返さないまま、箱を持ってレジのほうへ歩いていきました。
妻は手にしていた箱を棚に戻すと、私に向き直りました。
「ごめんなさいね。ちゃんと説明してくれてたのに」
「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」
私がそう答えると、妻は小さく頭を下げ、男性のあとを追っていきました。
レジのほうを見ると、男性はセットの箱を抱えたまま、列に黙って並んでいました。
突然怒鳴られたときは驚きましたが、妻が間に入ってくれたおかげで、それ以上言い合いになることはありませんでした。
もう少し落ち着いて説明を聞いてもらえたら、こんなことにはならなかったのに。
そう思いながら、私は再び売り場の仕事に戻りました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














