「ごゆっくりどうぞ」→「こっちは急いでるんだけど」ほかの客を急かしていた男性。だが、自分の会計で店員に言われた思いがけない言葉
「ゆっくりで大丈夫ですよ」に返ってきた声
仕事帰りに立ち寄ったスーパーでのことです。
夕方の混雑する時間帯で、どのレジにも長い列ができていました。
私のすぐ前に並んでいたのは、上着を着た男性客です。
腕を組みながら、前の人の会計をじっと見つめていました。
その前にいた女性客は、小銭入れを開き、支払いに必要なお金を探していました。
なかなか小銭がそろわない様子でしたが、店員さんは穏やかな声で言いました。
「ゆっくりで大丈夫ですよ」
すると、私の前の男性客が大きなため息をついたのです。
「はあ……いつまでかかるんだよ。こっちは急いでるんだけど」
女性客の手が止まりました。店員さんは男性のほうを向き、軽く頭を下げます。
「お待たせして申し訳ございません」
「いや、ゆっくりでいいとか、勝手に言わないでくれる?待ってる人もいるんだからさ」
店員さんがもう一度謝っても、男性の文句は続きました。
「だいたい、この時間にレジ少なすぎでしょ。もっと何とかならないの?」
女性客は申し訳なさそうに身を縮め、急いで小銭を出していました。
私も後ろに並んでいた人たちも、黙って待つしかありません。急いでいる気持ちは分かりますが、そこまで強く言わなくてもいいのに、と感じました。
ようやく支払いを終えた女性客は、品物をいくつかの袋に分け、残りを持って袋詰め台へ移動しました。
財布が出てこない男性客に向けた笑顔
次は、あれほど急いでいた男性客の番です。
店員さんが品物を通し、合計金額を伝えたときでした。
男性客が上着のポケットに手を入れたまま、動きを止めたのです。
「あれ……ちょっと待って」
反対側のポケットを探し、かばんの中ものぞき込みます。それでも財布が見つかりません。
「おかしいな。どこ入れたっけ…」
ポイントカードも出てこないようで、男性は何度も同じ場所を探していました。
先ほどまでほかの客を急かしていた男性が、今度は自分の会計で列を止めてしまったのです。
けれど、後ろに並ぶ人たちは誰も文句を言いませんでした。
そのとき、店員さんが男性に声をかけました。
「ごゆっくりどうぞ」
先ほど女性客に声をかけたときと、まったく変わらない穏やかな笑顔でした。
「あ……いや、すみません」
男性は一瞬、店員さんの顔を見ました。それから目をそらし、黙ってポケットを探し直します。
さっきまで「ゆっくりでいいとか、勝手に言わないで」と怒っていたのに、今度は自分が同じように待ってもらっている。その状況に、何とも言えない気まずさを感じました。
やがて男性は、上着の内ポケットの奥から財布を取り出しました。
「あった……」
小さくつぶやいて会計を済ませると、先ほどまでの勢いはなく、うつむき加減で足早に店を出ていきました。
店員さんは何事もなかったように私へ向き直り、笑顔で頭を下げました。
「大変お待たせいたしました」
男性を責めることも、嫌味を言うこともありませんでした。相手が誰であっても態度を変えなかった店員さんの姿が、今でも印象に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














