「こっちだって客なんだ」飛行機の通路で屈伸を続けた男性。だが、客室乗務員の落ち着いた注意に黙り込んだ瞬間
狭い機内で始まった突然のストレッチ
海外旅行に出かけたときのことです。
私が乗ったのは、料金の安さが売りの飛行機でした。
機内はほぼ満席で、座席も狭く、私も窮屈な姿勢で座っていました。
離陸からしばらくして、数列前の通路側に座っていた大柄な男性が立ち上がりました。
「ああ、もう限界だ。脚がつらい…」
男性はそうつぶやくと、前の座席の背もたれに両手をかけ、その場で屈伸を始めたのです。
ひざを曲げ伸ばしするたびに、つかんだ背もたれがぐらぐらと揺れています。座っている人も、落ち着かない様子でした。
しばらくすると、その席の乗客が振り返って声をかけました。
「あの、すみません。席が揺れるので、つかまらないでもらえますか?」
ところが男性は、背もたれから手を離そうとしません。
「いや、ずっと座ってたら脚が痛くなるだろ。ちょっと伸ばしてるだけだよ」
「でも、こちらも揺れてしまって…」
困ったように伝える乗客に、男性は少し声を荒らげました。
「こっちだって客なんだ。少しくらいいいだろ!」
そう言って、また背もたれを引っ張りながら屈伸を続けたのです。
近くの乗客たちも、気になった様子で男性を見ています。
脚がつらいのは理解できますが、他人の座席を揺らしてまで続けるのは困りものです。私も見ていて落ち着きませんでした。
客室乗務員が告げた、落ち着いた一言
そこへ、通路の奥から客室乗務員がやってきました。
男性のそばで立ち止まると、落ち着いた声で注意します。
「お客様、シートベルトのサインが出ております。恐れ入りますが、お席にお戻りください」
それでも男性は納得できない様子です。
「だから、脚が痛いんだって。座ってたらつらいんだよ」
客室乗務員は、男性がつかんでいる背もたれに目を向けました。
「おつらいところ申し訳ありません。ただ、前のお客様のお席も揺れてしまっていますので…」
そして、男性の顔を見て続けました。
「今はお席にお戻りください。サインが消えましたら、ご案内いたします」
その言葉に、男性はようやく背もたれから手を離しました。
前の席の乗客が、こぼれそうになっていた飲み物のカップを持ち上げると、客室乗務員はその様子にも気づいたようです。
「ご迷惑をおかけしました。新しいお飲み物をお持ちしますね」
そのやり取りを見ていた後ろの列から、小さく笑う声が聞こえました。
男性は何か言いたそうに口を動かしましたが、それ以上は言い返さず、自分の席に腰を下ろしました。
シートベルトを締めると、顔をそむけて黙ってしまいました。
前の席の乗客は、客室乗務員に軽く頭を下げていました。
ようやく背もたれの揺れも収まり、私もほっとしました。
脚を伸ばしたい気持ちはわかります。それでも、周囲に迷惑をかけていい理由にはなりません。
感情的にならず、安全と周囲への配慮を伝えた客室乗務員の対応が、今でも印象に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














