「ねえ、まだなの?試合が始まっちゃうんだけど」大量の小銭で店員を急かした女性客が、直後に言葉を失った理由
試合開始直前、レジに広げられた大量の小銭
以前、球場の飲み物売り場で短期のアルバイトをしていたときのことです。
試合開始が近づくと、売り場は一気に混雑します。
その日も、どのレジにも長い列ができていました。
私はカウンターでレジを担当し、すぐ後ろでは40代の男性社員が飲み物を用意していました。
そんなとき、30代くらいの女性客が私のレジにやってきました。
「ビールちょうだい」
私が代金を伝えると、女性は小銭入れを取り出しました。
トレーを差し出した途端、女性は小銭入れを逆さにして、中身を一気に広げたのです。
ジャラジャラと大量の硬貨がトレーに積み重なりました。
「あの、カードでもお支払いいただけますよ」
思わずそう伝えると、女性は少し不機嫌そうな顔をしました。
「小銭を使い切りたいの。現金でいいでしょ」
そう言いながら、女性は小銭入れの中を指で探っています。
「こちらで全部でしょうか?」
「もう、いいから数えてよ」
私はトレーの硬貨を一枚ずつ数え始めました。
すると、後ろにいた社員も作業を止め、レジの横へ来てくれました。
二人で硬貨を確認していましたが、枚数が多く、なかなか終わりません。
後ろのお客様たちも、落ち着かない様子で待っています。
「ねえ、まだなの?試合が始まっちゃうんだけど」
女性は困った顔で私たちを急かしました。
私も焦っていましたが、金額を間違えるわけにはいきません。
試合開始の歓声が響いた瞬間
ようやく数え終わったところで、社員が女性に声をかけました。
「お客様、申し訳ありません。お代金が少し足りないようです」
「えっ?そんなはずないんだけど……」
女性は慌てて小銭入れをのぞき込み、もう一度中を探し始めました。
その様子を見た社員は、列のほうへ向き直りました。
「後ろのお客様は隣のレジへどうぞ」
そして、女性にも落ち着いた声で伝えました。
「こちらは、ご準備ができるまでお待ちしております」
社員が女性の対応を引き受け、私は隣のレジに移りました。
待っていたお客様たちも次々に移動し、注文を受けられるようになりました。
一方、女性が立っているレジには、もう誰も並んでいません。
女性は空いたカウンターの前で、小銭入れを何度も確かめていました。
そのときです。
客席のほうから、大きな歓声が響いてきました。
試合が始まったのです。
「あっ…」
女性は顔を上げ、小銭入れを握ったまま、歓声のするほうを見つめていました。
先ほどまで私たちを急かしていた女性も、そのときは何も言いませんでした。
隣のレジで対応した男性客にビールを手渡すと、男性は笑顔で言いました。
「ありがとう、助かったよ!」
そして、急いで客席へ向かっていきました。
私は次のお客様の注文を受けながら、ふと隣のレジに目を向けました。
そこにはまだ、小銭入れを手にした女性の姿がありました。
あれほど急いでいたのに、試合開始の瞬間をレジの前で迎えることになるとは、本人も思っていなかったのでしょう。
周りのお客様を待たせてまで小銭を使い切ろうとしていた女性が、歓声を聞いて言葉を失ったあの瞬間は、今でも忘れられません。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














