「前の分と相殺ね」香典代を返さない義母。葬儀帰りに突然差し出した紙袋。中身を見た妻が思わず口にした一言
「今回だけ」と言った妻
仕事から帰ると、妻が慌ただしく礼服を用意していました。
その日は親戚の葬儀があり、妻の両親も私たちの車で会場へ向かうことになっていたのです。
私も急いで着替え、妻を助手席に乗せて実家へ迎えに行きました。
夕方の道を、私の運転で会場へ向かいます。助手席には妻、後部座席には義父と義母が並んで座っていました。
信号待ちをしていたとき、義母がふいに妻へ声をかけました。
「ねえ、悪いんだけど、香典代を立て替えてもらえない?」
急な知らせで、香典を包む準備ができていなかったようです。
妻は後ろを振り返り、あきれた顔をしました。
「えっ、また?前の分もまだ返してもらってないよ」
実は、以前にも妻が義母の香典代を立て替えたことがあり、そのお金はまだ返ってきていませんでした。
「分かってるわよ。今度こそまとめて返すから。お願い」
義母は悪びれる様子もなく、にこにこしています。
「もう……。本当に今回だけだからね」
妻はため息をつきながらバッグを開け、今回も立て替えることにしました。
運転しながらそのやり取りを聞いていた私は、心の中で苦笑いしていました。
前の分さえ返ってきていないのに、また「今度まとめて」です。
正直、今回のお金も戻ってこないだろうと思っていました。
「前の分と相殺ね」と差し出された紙袋
葬儀を終えて外に出るころには、すっかり夜になっていました。
義母は会場で受け取った香典返しの紙袋を大事そうに抱え、後部座席に乗り込みました。
帰りの車内はしばらく静かでした。
妻も疲れたのか、助手席で黙って前を向いています。立て替えたお金の話も出ないまま、車は夜道を走っていました。
ところが突然、後部座席からガサガサと袋の音が聞こえてきました。
「はい、これ。前の分と相殺ね」
義母が身を乗り出し、香典返しの紙袋を妻に差し出したのです。
「え?これで?」
妻は戸惑いながら紙袋を受け取り、中をのぞきました。
そして、ぽつりと言いました。
「……お母さん、これ、お茶だよ」
「えっ、お茶?」
義母は驚いた顔で、妻の手元の袋をのぞき込みました。
どうやら、中身をよく確認していなかったようです。
隣に座っていた義父は、そっと窓のほうに顔を向けました。その肩が小さく揺れています。
私も思わず吹き出しそうになりましたが、運転中なので必死にこらえました。
まさか、香典返しのお茶で以前の立て替えを帳消しにしようとするとは。
義母のあまりに堂々とした様子と、妻の冷静な返事がおかしくて仕方ありませんでした。
妻の実家に到着すると、義母は私たちを居間へ呼びました。
そして財布を取り出し、前の分と今回の分をきちんとそろえて妻に渡したのです。
「はい、これで本当に返したわよ。お茶は利息がわりね」
「もう!最初からお金で返してくれればいいのに!」
妻はあきれながらも、とうとう笑い出しました。
私もそこで、帰りの車からずっとこらえていた笑いを抑えきれなくなりました。
返ってこないと思っていたお金は無事に戻り、思いがけずお茶までついてきたのです。
あの夜の義母の得意げな顔は、今でも忘れられません。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














