「ぬか床は、あなたが捨てたのよ」留守中に上がり込み、息子の前で私のせいにする義母。テーブルを見てうつむいた
実家へ帰る朝
出発の朝、近所に住む義母の家で合鍵を預けました
台所の流しの下には、私が5年続けているぬか床があります。義母は前から、臭いと嫌っていました。
10月の連休、私の実家へ2泊3日で帰る朝、夫とスーツケースを引いて、近所に住む義母の家に寄りました。
留守のあいだの、もしもの時のために、合鍵を預けるためです。
玄関先で鍵を受け取ると、義母は胸を張りました。
「もしもの時しか、使わないわ。」
「勝手に上がったり、しないわよ。」
私たちはその言葉を信じ、実家へ向かいました。
帰ると、流しの下のぬか床がなくなっていました
3日目の夜に帰り、真っ先にぬか床をかき混ぜようと、流しの下の扉を開けた私は、その場にしゃがみこみました。
ぬか床の白い容器を置いていた場所が、ぽっかり空いていたのです。
「ぬか床が、ない!」
台所じゅう探しても見つかりません。夫は、自分でどこかにしまったんだろ、と取り合ってくれませんでした。
しかし、5年間大切に育て、ほとんど毎日手入れしてきたぬか床です。
自分で片付けた場所を忘れるとは思えません。
義母は以前からぬか床の臭いを嫌がっていました。
まさかとは思いましたが、預けた合鍵のことが頭に浮かびました。
義母は、鍵は出してもいないと言い切りました
次の日の夜、実家のお土産を取りに来た義母に、お茶を出しました。
夫も仕事から戻り、奥のソファにいます。
ぬか床が消えたことを話し、留守のあいだに台所へ入りましたか、と聞くと、義母はマグカップから手を離し、眉を上げました。
「鍵はたんすにしまったまま。」
「出してもいないわよ。」
ソファの夫も、母さんがそんなことするわけないだろ、とうなずきました。
夫にまで疑われ、胸が苦しくなりました。
それでも、この場で感情的に言い返すのはやめようと思いました。私には、義母に確認したいことがあったからです。
だらしないと言われて
義母は、ぬか床は私が捨てたのだと言いました
義母は、身を乗り出して私の顔をのぞきこみました。
「ぬか床は、あなたが捨てたのよ。」
「だらしないのね、本当に。」
5年間、ほとんど毎日かき混ぜてきたぬか床です。自分で捨てるはずがありません。
何も知らないのに、どうして私が捨てたと決めつけられるのでしょうか。悔しくて言い返しそうになりましたが、ぐっとこらえました。
義母が家に入っていないと言い切ったことを、夫にも聞いていてほしかったのです。
義母に預けた合鍵が、うちの玄関にありました
私は黙って席を立ち、戻ってくると、義母のマグカップの前に、持ち手がオレンジ色の鍵を置きました。その横に、自分の銀色の鍵を並べます。
「お義母さんに預けた、合鍵です。」
「うちの玄関に、ありました。」
見つけたのは帰った次の朝、玄関の靴箱の上です。
うちの鍵は、私と夫の銀色の2本と、このオレンジの1本だけ。
扉は閉めると自動で鍵がかかるので、置き忘れても外へは出られます。
義母に預けたはずの合鍵が、留守にしていた我が家の玄関にあったのです。
見つけたとき、すぐに夫へ話すことも考えました。
しかし、夫は最初から義母を信用しています。
ただ鍵を見せるだけでは、義母が様子を見に来ただけだと説明すれば、それで終わってしまうかもしれません。
だからこそ、義母自身が鍵を使っていないと言い切るまで、待っていたのです。
合鍵をつまみ上げると、義母はうつむきました
義母の目が、2本の鍵の上で止まりました。
「も、もしもの時だと思って……。」
先ほどまで鍵を出していないと言い張っていた義母が、今度は様子を見に入ったのだと言い訳を始めました。
夫も驚いた様子でソファから立ち上がり、なぜ嘘をついたのかと義母を問いただしました。
義母は慌ててオレンジ色の合鍵を手に取り、自分のほうへ引き寄せました。
私はその手元を見ながら、静かに手を差し出しました。
「出してもいない鍵、返してもらいます。」
義母はしばらく鍵を握っていましたが、やがて私の手に戻しました。
私はその合鍵を指先でつまみ上げ、もう預けないことを伝えました。
夫が、鍵と母親の顔を見比べます。
しかし、合鍵を取り戻しただけでは終われません。肝心のぬか床がどこへ行ったのか、まだ分からなかったからです。
私が改めてぬか床の行方を尋ねると、義母は最初、玄関の様子を確認しただけだと言い張りました。
そこで夫が、玄関を確認しただけならなぜ鍵を置き忘れたのか、台所には入らなかったのかと質問を重ねました。
それでも義母ははっきり答えようとしません。
夫はさらに、ぬか床がなくなったことについても、知っていることがあるなら隠さず話してほしいと伝えました。
それまで義母をかばっていた夫が真剣な表情で問いただすと、義母は次第に言葉を詰まらせました。
そして、ついに留守中に台所へ入り、ぬか床を容器ごと持ち出したことを認めたのです。
以前から臭いが気に入らず、私たちが留守にしている間に処分してしまおうと思ったそうです。
持ち帰ったぬか床は、すでに容器ごと捨ててしまったというのです。
夫もようやく事情を理解し、母親をかばったことを私に謝りました。
そして、勝手に家に入って人のものを捨てたことは許されないと、義母を厳しく注意しました。
勝手に家へ入り、ぬか床を捨てたと知られれば、もう合鍵を預けてもらえなくなる。だから私のせいにしたのでしょう。
だらしなく鍵を置き忘れたのは、義母のほうでした。
夫とは今後、義母に合鍵を預けないことを確認し、念のため玄関の鍵を交換することも決めました。
大切なぬか床を失った悔しさは残っています。それでも、夫がようやく私の気持ちを理解し、義母との間にきちんと線を引いてくれたことには、少しほっとしました。
義母はマグカップに目を落としたまま、顔を上げられませんでした。
※本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














