「今日は何もないの?」野菜を届けるたびにお返しを催促する近所の女性。だが、町内会の集まりで隣の奥さんが口を開いた
ありがたかった野菜のおすそわけが負担に
近所に住む年配の女性は、庭の家庭菜園でとれた野菜を、よく我が家に届けてくれました。
「たくさんとれたから、よかったら食べて」
そう言って渡してくれるので、私はいつもお礼を言って受け取っていました。せっかくのご厚意ですし、ありがたいと思っていたのです。
ところが、ある日の昼のことでした。
いつものようになすの入ったかごを持ってきた女性が、玄関先でこんなことを言ったのです。
「このなす、立派でしょう?」
「本当ですね。いつもありがとうございます」
「そういえば、最近はお返しもないわね。もう少し気のきく人だと思ってたんだけど」
突然の言葉に、私は驚きました。
「あ、すみません…」
何と答えればいいのか分からず、そう返すのが精いっぱいでした。
気になった私は、その足で近くの洋菓子店へ行き、焼き菓子の詰め合わせを届けました。
これでよかったのだろうと思ったのですが、その後も状況は変わりませんでした。
女性は野菜を渡したあとも玄関先に立ち、何かを待つようにこちらを見るのです。
「今日は何もないの?」
「すみません、今日は用意していなくて…」
「あら、そうなの」
女性はため息をついて帰っていきました。
一度お返しをしたとはいえ、野菜をいただくたびに何かを用意しなければならないのでしょうか。
だんだん野菜を受け取ること自体が負担になり、玄関のチャイムが鳴ると気が重くなるようになりました。
町内会の集まりで、隣の奥さんが口を開いた
ある日の昼、町内会の集会所で集まりがありました。
話し合いが終わり、住人たちがお茶を飲みながら雑談していたときのことです。
例の女性が、周りにも聞こえる声で話し始めました。
「最近はね、野菜を分けてあげても、お返しひとつない人がいるのよ」
そう言って、ちらりと私のほうを見たのです。
一度は焼き菓子を届けたのに…。そう思いましたが、みんなの前で言い返す勇気はありませんでした。
すると、私の隣の家の奥さんが口を開きました。
「それ、ちょっと違うんじゃない?」
女性が不思議そうに顔を向けます。
「お返しを待つなら、おすそわけとは言わないわよ」
「え?私だって親切で持っていってるのよ」
「それは分かるけど、毎回お返しを期待されたら、もらうほうも気を使うでしょう」
奥さんは落ち着いた口調で続けました。
「私も前に、お返しがないって言われて困ったことがあるの。せっかくいただいても、気軽に受け取れなくなるわ」
そのやり取りを聞いていた住人の一人も、小さな声で言いました。
「うちも、言われたことがあるわ」
女性は少し顔を赤くして、「そんなつもりじゃ……」と言いかけましたが、それ以上は何も言いませんでした。
私も何か言おうとしましたが、うまく言葉が出てきませんでした。ただ、隣の奥さんが代わりに伝えてくれたことが、本当にありがたかったのです。
それ以来、その女性からお返しの話をされることはなくなりました。野菜が届く回数も、めっきり減りました。
隣の奥さんとは、今では庭先で立ち話をするのが日課です。
「あのときは、ありがとうございました」
「いいのよ。私も前から気になってたから」
奥さんは庭のトマトの枝にそっと手を添えながら、笑っていました。
おすそわけはありがたいものですが、お返しを求められると、受け取る側も困ってしまいます。あの日、隣の奥さんが言ってくれて、ようやく気持ちが楽になりました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














