「またあなたが好きそうなの見つけたの」優しい義母の善意の山→こっそり手放したことを誰にも言えない
紙袋いっぱいに届く、ちょっとずれた善意
義母は、男の子ばかり3人を育て上げた人です。
私が嫁いできたとき、「やっと女の子が来てくれた」と涙ぐんでいたのを、今でもはっきり覚えています。
その距離感は、結婚から数年経っても変わりません。
月に一、二度は遊びに伺うのですが、玄関を開けるなり、義母は決まって紙袋を抱えて出てきます。
「またあなたが好きそうなの見つけたの」
差し出される袋の中身は、いつも丁寧に選ばれていました。
お取り寄せの和菓子、評判のジャム、近所のセレクトショップで見繕ったニット、柔らかいワンピース。
義母の中の「私」が、そこにいる。
けれどその「私」は、本物の私からほんの少しだけずれているのです。
甘い和菓子より、しょっぱいおせんべいが好き。
落ち着いた色より白や生成りに袖を通したい。袋の中身を手に取って、私はいつも同じ顔を作ります。
「うれしいです、ありがとうございます」
義母が私のことを思って足を運んで選んでくれた、その時間には心からのお礼以外、出てきようがないんです。
家に帰って夫と二人になったとき、紙袋をテーブルに置いたまま、ふっと黙る瞬間がありました。
(これ、どうやって着回そうかな)
夫は察して、何も言いません。
妊娠中の整理で、業者の段ボールに詰めた日
そんな善意の山が、結婚から数年でクローゼットの一段を占領していきました。
タグの付いたままの洋服、開封せずに賞味期限が近づいたお菓子、用途のはっきりしないキッチン雑貨。
そんな中、今年、私のおなかに赤ちゃんが宿りました。
安定期に入ってから、夫と「赤ちゃん部屋を作ろうか」と話して、家じゅうの断捨離を始めたんです。
妊娠中だからこそ、軽い動作だけで進められる範囲でと決めて。
クローゼットの前に座り込んで、眠っていた服を一枚ずつ袋から取り出します。
(ごめんなさい、お義母さん)
声には出さず、何度も心の中で頭を下げました。
状態のいいものは買取の段ボールへ。家にあっても誰にも袖を通されないより、必要としている誰かに届くほうがきっといい。
数日後、振り込まれた査定額を見て、私は少しだけ笑ってしまいました。
思っていたより、ずっと真っ当な金額だったからです。それを、自分のお小遣いの口座にこっそり移します。
夫にも詳しい行き先は告げていません。
義母にも、もちろん言うつもりはありません。
もらった善意を、別の形に変えてしまった、後ろめたさ。
それでも、もらった気持ちは確かに私の中に残っているという、不思議な手触り。
たぶんこれからも、紙袋は届き続けます。私はまた、「ありがとうございます」と笑顔で受け取って、こっそり整理する日々を続けるのでしょう。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














