tend Editorial Team

2026.05.15(Fri)

「昨日彼女が帰宅しなかったらしい」仲がよかった後輩を家に泊めた。翌日、学校に行くと思わぬ騒ぎになっていた

「昨日彼女が帰宅しなかったらしい」仲がよかった後輩を家に泊めた。翌日、学校に行くと思わぬ騒ぎになっていた

青ざめた朝の研究室

私は大学院の修士2年で、研究室の卒論生サポートを担当していた。

1年がかりで並んで研究を進めてきた女性の後輩とは、いつしか親密な関係になっていた。

前夜は実験が長引き、終電を逃した彼女を大学近くのアパートに泊め、一緒にもう一晩を過ごした。

翌朝、彼女は実家に立ち寄ってから登校すると言い、最寄り駅で別れた。

私が一人で研究室に着いたとき、空気が普段と違っていた。同期たちが机を囲んでざわついている。教授が私を見るなり、声を低くして告げてきた。

「昨日彼女が帰宅しなかったらしい。ご両親から大学に連絡が入った」

頭が真っ白になった。心当たりは私しかいない。手にしていた研究ノートが、汗で湿っていくのがわかった。

しらを切り通した数時間

事態はすでに動いていた。彼女のご両親は早朝のうちに警察に捜索願を出し、教授のもとには問い合わせの連絡まで来ていたという。

研究室全体が落ち着かない空気に飲まれている。

(ここで認めれば終わる)

瞬時に覚悟を決めた。

私は何も知らないという表情を崩さず、同期や教授からの問いかけに、すべて首を振った。

「最後に見たのはいつだ」「夜の連絡は来たか」

声が飛んでくるたびに胃の奥が冷えた。心拍だけが耳元で響いている。

それでも口元だけは平静を装い、彼女からの一報をひたすら待ち続けた。窓の外で鳴く雀の声まで、やけに遠く聞こえた。

受話器の声に走った冷気

昼前、研究室の電話が鳴った。

教授が立ち上がり、受話器を耳に当てた瞬間、その表情がほどけた。

私は息を詰めて様子をうかがった。

「同好会の友だちの家に泊めてもらいました」

彼女の声だった。

教授に直接、嘘の謝罪を入れていたのだ。

あとで聞けば、私たちが駅で別れた直後、彼女は同好会の女友達に電話を入れ、わずかな時間で口裏合わせを完了させていたという。

事態は鎮まり、捜索願も取り下げられた。誰一人として疑念を口にする者はいなかった。

受話器越しに流れてきた彼女の落ち着き払った声を思い出すたび、今でも肝が縮む。

私が呆然と見守るしかなかった一方で、彼女は一晩のうちに筋書きを組み立て、女友達まで巻き込んで現実を書き換えてみせた。

(あの一晩、誰の判断が一番冷静だったのか)

穏やかだと信じていた後輩の内側にあった冷静さに、青春の終わりの冷気を感じた朝だった。何十年経っても、あのとき教授に告げられた一報と受話器越しの嘘の声は、私の中で並んで残り続けている。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、60代以上・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

RANKING

OTHER ARTICLES

NEW 2026.05.15(Fri)

「これ、半分ずつね」最初は払ってくれた年下彼氏がデート三度目から豹変→共通の知人が漏らした一言で凍りついた瞬間
tend Editorial Team

NEW 2026.05.15(Fri)

「ギャンブルはもうやらないから」1000万円の借金発覚後に同棲継続を懇願した彼→何度目かの再発で決断したのは
tend Editorial Team

NEW 2026.05.15(Fri)

「あれ、偶然?」街角で目が合った瞬間に背筋が凍った→別れた相手から数日前に届いた一文の正体
tend Editorial Team

RECOMMEND

2026.03.29(Sun)

「玄関ドアを開ける前に上着を払うだけで違う」花粉を家に入れない新習慣と便利グッズ
tend Editorial Team

2026.03.19(Thu)

インフルエンサー脱税初公判で起訴内容認めるも拭えぬ違和感と贅沢三昧の裏側に透ける「虚飾の代償」とは
tend Editorial Team

2025.10.23(Thu)

参政党・神谷宗幣代表、高市新首相に政策が一番近いと期待を寄せる。SNSでは「参政党は戦略を変えるべきだろう」の声も
tend Editorial Team