「文句あるなら日本に帰れ!」南国の島で潔癖ルールを強要する夫。だが、家族との電話を機に帰国を決意した
玄関での「全部脱ぐ」から始まった違和感
再婚した夫が超潔癖だと知ったのは、南国の島での新婚生活が始まってすぐのことだった。
外出から戻るたびに、夫は玄関で服をすべて脱いでシャワーへ向かう。
スーパーの袋も玄関で開けて、中身をひとつひとつパッケージから出して水洗いし、乾かしてから冷蔵庫に入れる。これが毎回のルーティンだった。
こちらが戸惑った顔をすると、夫はすぐに言い張った。
「外から帰ったら全部脱ぐのが当たり前」
説明ではなく、宣言だった。
一回り以上年上の日系の経営者との出会いからわずか1年でのスピード再婚。
現地に来るまで、彼の潔癖を知る機会はなかった。入籍前は毎回彼が日本に来てくれていたし、自宅は「改築中だから」と外観しか見せてもらえなかった。
島での暮らしが始まって初めて、その「当たり前」の全貌が見えた。
対話にならない時間の積み重なり
言語の違いも文化の違いも、乗り越えられると思っていた。
それよりも大きかったのは、「自分の常識が絶対だ」という夫の感覚だった。
何か意見を口にすると、夫はきまって同じ言葉で返した。
「島に住めて幸せだろう?」
それでも不満を引っ込めず食い下がった夜、初めて返ってきた言葉は別物だった。
「文句あるなら日本に帰れ!」
不満を持つな、ではなく出ていけだった。話し合いをしようとするたびに、対話ではなく圧になっていった。どちらが正しいかではなく、どちらが黙るかの時間だった。
言葉が通じないのではない。気持ちが通じていなかった。
価値観を共有しようとする意欲が、夫の側にはなかった。
あったのは「こちらが慣れるべきだ」という一方向の期待だけだった。
潔癖に合わせた暮らし方を覚えていくにつれて、自分が何に疲れているのかがわからなくなってきた。生活の手順が増えた分だけ、一日が短くなった。
食材を洗い終えるまで台所で手持ち無沙汰に待つ時間、シャワー前に玄関で服をたたむ作業。それぞれは小さなことだが、積み重なると一日が重くなっていった。
荷物をまとめた日の青い海と、解放
別れを決めたのは、大きなけんかがあったからでも、誰かに相談したからでもない。
静かに積み上がったものが、静かに限界に達しただけだった。
日本にいる家族へ電話したとき、「元気そう」と言われてうまく返せなかった。
そのとき、もう戻ろうと決めた。
島を出る便に乗った日、窓から見えた海はひどく青かった。
帰国して最初の夜、買い物袋をそのままテーブルに置いた。洗わなかった。脱がなかった。何も言われなかった。
体からすっと力が抜けた。それが解放というものだと、そのとき初めて実感した。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














