「こっちはタクシーまで使ったんだぞ!」妻に買ってきてあげたハンバーガー。だが、本音を見抜かれ状況が一変
放置された包み
その日は仕事が早く終わり、足取りも軽かった。結婚して9年、妻の好物くらいはわかっている。
帰り道で見つけたハンバーガーショップに迷わず寄った。袋を片手にタクシーを拾い、喜ぶ顔を想像しながら家路を急いだ。
「ただいま。買ってきたぞ、好きなやつ」
「……ありがとう」
妻はそれだけ言って、包みをテーブルの端に置いた。手にも取らない。期待していた分、拍子抜けした。
翌朝になっても、ハンバーガーは昨日のままそこにあった。手すらつけていない。
(こっちはタクシーまで使ったんだぞ!)
かちんときた俺は、いつも持参している弁当を、わざと食卓に残して出社した。言葉にはしない、けれど伝われ、という当てつけだった。
見抜かれていた
夜、帰宅すると妻が腕を組んで立っていた。
「お弁当、置いていったわね。当てつけでしょう」
怒っている妻を見て、しめたと思った。こっちの不満が、ようやく伝わった気がしたのだ。だがその気分は、すぐに引っ込んだ。
「昨日ね、体調が悪くて食欲がなかったの。」
「言ってくれよ、それなら」
「あなたがあんまり張り切ってたから、悪くて言えなかったのよ」
俺は黙るしかなかった。続けて妻は、ずばりと核心を突いてきた。
「食べたかったの、本当はあなたでしょ」
ぐうの音も出なかった。店の前で先に動いたのは、確かに自分の腹だった。サプライズのつもりが、半分は自分のためだったと見抜かれていた。
「……まいったな。お見通しか」
「お互いさまよ。黙ってた私と、すねたあなた」
そこへ、娘がドアの隙間から顔を出した。
「ねえ、怒ってるの?」
言い返せず、夫婦そろってばつ悪く目を見合わせた。
変わった夫婦
その夜、ひとつ決めごとをした。不機嫌で察してもらおうとせず、思ったことはまず口に出す。たったそれだけのルールだ。
後日、また早く帰れる日が来た。例の店の前で、俺はスマホを手に取った。
「今日はあのハンバーガー、いけそうか?」
「うん、食べたい。聞いてくれてありがとう」
玄関を開けると、妻が待ち構えていた。袋を渡すと、あの日とはまるで違う顔でほころんだ。
「これこれ。やっぱり聞かれると嬉しいわね」
あの日タクシーで運んだ袋より、ずっと手応えがあった。同じ袋、同じ店。
違うのは、黙って押しつけるか、ひとこと尋ねるかだけ。それだけで、こんなにも受け取られ方が変わるのだと知った。
「じゃあ次は、俺の分も堂々と買う」
「最初からそう言えばよかったのよ」
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














