「マナー悪いやつに言ってやったんだ」チャイムを連打する隣人→2時間続く報告会に震えた夜
豹変した隣人
集合住宅で隣り合った男性は、はじめのうちは驚くほど面倒見のいい人でした。
回覧板を届けるついでに、地域の細かな決まりごとまで、丁寧に教えてくれます。ゴミの分別を間違えたときも、笑って直しておいてくれたほどです。
「何かあったら、遠慮なく頼ってくださいね」
その言葉に、私はすっかり安心していました。見知らぬ土地で、心強い隣人に恵まれたと、そう思っていたのです。
挨拶を交わすたびに、いい人だと信じきっていました。
変化は、ほんの些細なきっかけでした。彼のある頼みごとを、私が一度だけやんわり断ったのです。
その瞬間、彼の表情がすっと消えたのを、今でも覚えています。
まるで別人のような、冷たい目でした。
その日から、チャイムが鳴りやまなくなりました。
一度押せば気が済むというものではありません。応答するまで、何度も何度も連打してくるのです。
ドア越しに、押し続ける指の気配が伝わってくるようでした。
終わらない報告会
時間の感覚もないようでした。早朝も深夜も、彼の都合で容赦なくチャイムは鳴ります。
居留守を使えば、今度はベランダの窓を叩いてくるのです。カーテンの隙間から、こちらの様子をうかがう影が見えることもありました。逃げ場は、どこにもありませんでした。
根負けして玄関を開けると、彼は満足げに、その日の成果を語りはじめました。
玄関先に立ったまま、帰るそぶりはまるでありません。
「マナー悪いやつに言ってやったんだ」
穏やかな口調で、彼はそう言いました。
町内の誰それが非常識だ、だから自分が代わりに文句を言ってやった。
そういう話が、二時間も続くのです。誰を、どんな言葉で問い詰めたのか、彼はうれしそうに、身振りまで交えて繰り返しました。
話が途切れそうになると、また新しい標的の名前が出てきます。
「あなたも、そう思うでしょう?」
同意を求められるたび、私は曖昧にうなずくしかありませんでした。
少しでも否定すれば、次に懲らしめられるのが自分になる気がしたからです。彼の機嫌をうかがう自分が、情けなくもありました。
けれど、下手に逆らって、あの標的の一覧に加えられることのほうが、ずっと恐ろしかったのです。
誰かのために動いていると信じて疑わない、その澄んだ目が、何よりも恐ろしく感じられました。
彼の中にある敵の一覧に、いつ自分の名前が加わるのか。チャイムが鳴るたびに身がすくむ、そんな夜が今も続いています。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














