「ホットスナック、20個ね」コンビニでレジを止めた客。だが、店員の機転で状況が一変
短いほうの列を選んだ結果
昼休みが始まって十分。
コンビニの入口をくぐると、レジはもう二列に伸びていました。
短いほうを選んだのは、私の判断ミスでした。
隣の列がどんどん進んでいくのに、私の並んだほうは先頭から動かないのです。
背伸びをして前をのぞくと、レジ台の上に揚げ物の袋がいくつも積まれ、まだ増えているところでした。
「ホットスナック、20個ね」
言ったのは、男性客でした。
ケースを指でなぞりながら、数を言いつけています。
「チキンが足りないなら揚げてよ。待つから」
若い店員の手が止まりました。
「かしこまりました。ただ、揚げるのにお時間が」
「いいって。ここで待つから」
そこで待たれると、レジは一台潰れたままになります。
男性客はそれが分かっていない様子でした。
動じない自分を見せつけているようにさえ見えたのです。
後ろに並ぶのは、社員証を首から下げた人たちばかりでした。
誰も文句は言いません。ただ、腕時計を見る動作だけが少しずつ増えていきました。
背中に集まった視線
奥から出てきたのは、白髪まじりの店長でした。
一目で状況を見て取ったのでしょう。
声を荒らげることなく、ケース越しに話しかけました。
「揚げるのに15分ほどいただきます。番号札をお渡しいたしますので、店内でお待ちいただけますか。その間に、後ろのお客様のお会計を進めさせていただきます」
男性客が口を開きかけました。
「順番ってものが」
言葉が途中で消えたのは、その時です。
目が、自分の背後へ向きました。列に並んだ会社員たちが、みな黙ってこちらを見ていたのです。
責める顔ではありません。ただ、じっと待っている顔でした。
視線が集まった数秒だけ、店内から音が消えました。
男性客の肩が下がり、差し出された札を無言で受け取ります。
首の後ろを片手でこすりながら、雑誌の棚のほうへ歩いていきました。
店長がすぐに二台目のレジを開けます。
「お待ちのお客様、こちらへどうぞ」
止まっていた列が、ほどけるように動き出しました。
私の会計をしてくれたのは、さっきの若い店員でした。手つきに硬さは残っていましたが、袋を渡すときには表情がゆるんでいたのです。
「お待たせしました。ありがとうございます」
店を出ようとして、一度だけ振り返りました。
雑誌の棚に立った男性客は、札を持ったままレジのほうを見ようとしません。あれだけ大きかった声は、もう一度も聞こえてきませんでした。
別の店まで歩くのはやめました。買った弁当を抱えて外に出ると、昼休みはまだ半分近く残っていたのです。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














