「まだなのか。3分も待ってるぞ」レジの中に手を伸ばした客。だが、店長が正論をぶつけた結果
名前を聞く前に離れた客
大学生のころ、駅前の総菜店で夜のシフトに入っていました。
揚げ物は注文をいただいてから調理するため、出来上がった際にお呼びできるよう、注文時にお名前を伺う決まりでした。
その夜、カウンターに来た男性のお客さまが言いました。
「唐揚げ、大きいほうを一つ」
「かしこまりました。お名前を伺ってもよろしいでしょうか」
ところが、私がそう聞いたときには、男性はすでに売り場のほうへ歩き出していました。
後ろには会計を待つお客さまも並んでいたため、私はその場を離れられませんでした。
注文票には商品だけを書き、出来上がったらカウンター付近で声をかけることにしました。
数分後、男性が戻ってきました。
「まだなのか。3分も待ってるぞ」
「申し訳ございません。もうすぐ出来上がります」
すると男性は少し強い口調で言いました。
「名前も言っただろ。出来たなら呼べよ」
私は名前を聞けていなかったことを説明しようか迷いましたが、その場で言い合いになっても仕方ありません。
「失礼いたしました。出来上がりましたら、こちらからお声がけいたします」
そう伝え、私は次のお客さまの会計に戻りました。
レジに伸びてきた手
しばらくして唐揚げが出来上がり、男性を呼びました。
商品を渡し、会計を済ませようとしたときのことです。
私がお釣りを用意していると、男性がカウンター越しに手を伸ばしてきました。
「そこから取れば早いだろ」
指先が、開いていたレジの引き出しに近づきます。
突然のことで、私は一瞬動けませんでした。
すると近くにいた店長がすぐに私の横へ入り、男性とレジの間に立ちました。
「申し訳ありませんが、レジの中にはお手を触れないようお願いいたします。お釣りはこちらからお渡しします」
店長は声を荒らげることもなく、淡々と伝えました。
男性はまだ何か言いたそうな顔をしていましたが、店長は続けました。
「店内の様子は防犯カメラにも記録されていますので、こちらで対応いたします」
その言葉を聞くと、男性は伸ばしていた手を引きました。
「……じゃあ、早くしてくれ」
「はい。お待たせいたしました」
私がお釣りと商品を渡すと、男性はそれ以上何も言わず、店を出ていきました。
男性がいなくなると、それまで少し張り詰めていた店内の空気も、いつもの雰囲気に戻りました。
閉店後、店長が私に言いました。
「ああいうときは無理に一人で対応しなくていいから。すぐ呼んで」
私は自分の対応を注意されると思っていたので、その言葉に少し驚きました。
接客では、とっさにどうすればいいのか判断できないこともあります。あのとき、静かに間へ入ってくれた店長の姿は、何年たった今でも覚えています。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














