「3回も探して、本当に無いの?」何度も問い合わせした客。だが、最後に明かした事情とは
棚には値札だけが残っていた
スーパーで働いていたころ、夕方の品出し中に一人のお客様から声をかけられました。
「ちょっと、これを探しているんだけど」
差し出されたメモには、あるレトルト食品の商品名が書かれていました。棚を確認すると、値札はあるものの、商品は一つも残っていません。
端末で確認すると、売り場には在庫がない表示でした。
ただ、入荷直後の商品がまだ登録に反映されていないこともあったため、念のためバックヤードを確認することにしました。
「少々お待ちください。確認してまいります」
最初にバックヤードの保管棚を探しましたが、見つかりません。
結果を伝えると、お客様は少し困ったような顔をして言いました。
「今日入ってきた荷物にもないかな」
そこで二度目は、届いたばかりの商品の中を確認しました。
それでも見つかりません。
「申し訳ありません。やはり在庫はないようです」
すると、お客様は棚の値札を見ながら、もう一度尋ねました。
「別の場所に置いてあることはない?」
三度目は、特設売り場や別棚に移動されていないかを確認しました。
しかし、商品はありませんでした。
「何度も申し訳ありません。現在は品切れのようです」
そう伝えると、お客様は少し強い口調になりました。
「3回も探して、本当に無いの?」
私は責められているように感じ、どう答えればいいのか迷ってしまいました。
店長が確認した次回の入荷日
そこへ、近くを通った店長がやってきました。
「何かお探しでしょうか」
事情を説明すると、店長は端末で商品の発注状況まで確認しました。
「申し訳ありません。本日は在庫切れです。次回は明後日に入荷する予定になっています」
すると、お客様はすぐに尋ねました。
「取り置きしてもらうことはできますか」
「はい。入荷しましたらご連絡できますよ」
店長がそう答えると、お客様は少し安心したような表情になりました。
そして、ぽつりと事情を話してくれたのです。
「母が入院していてね。この商品なら食べてくれるんです」
病院の食事をあまり食べられず、その商品だけは比較的口にしてくれるのだといいます。
私はそこで初めて、お客様が何度も在庫を確認していた理由を知りました。
「そうだったんですね」
店長は予約票に必要事項を書き、入荷後に連絡することを伝えました。
帰り際、お客様は私にも声をかけました。
「何度も探してもらって悪かったね」
「いえ。見つけられなくて申し訳ありませんでした」
数日後、その商品が入荷すると、お客様は取り置き分を受け取りに来ました。
売り場で私を見つけると、軽く頭を下げて言いました。
「無事に渡せました。ありがとう」
最初は、在庫がないという説明を信用してもらえていないのだと思っていました。
けれど、相手が何度も確認したくなるほど、その商品を必要としていた事情があったのです。
接客では、目の前の言葉だけでは分からない事情があるのだと感じた出来事でした。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














