「お菓子くらい、いいでしょう」授業参観中に歩き回る子供。母親の対応に感じた本音とは
下のきょうだいを連れた参観日
小学校の教員をしていたころの話です。一年生の担任になった年、春の参観日に、3歳くらいの下の子を連れてきた保護者がいました。
小さなきょうだいを連れてくる方は珍しくありません。預け先が見つからないこともありますし、学校側も想定して、教室の後ろには少し余裕を持たせていました。
最初の十分ほど、その子は母親のそばで静かに立っていました。
ところが、だんだん退屈してきたのか、母親の服を引っぱったり、その場で体を揺らしたりするようになります。
私は授業を続けながら、後ろの様子を何度か確認していました。
教室に響いた袋の音
黒板に問題を書いていたとき、後ろからガサガサと袋を開ける音が聞こえました。
振り返ると、その子がスナック菓子の袋を抱えています。母親が鞄から出したようで、隣のいすには飴の袋も置かれていました。
静かな教室では、袋の音も食べ物の匂いも思った以上に広がります。窓側の児童が振り返り、その隣の子も後ろを気にし始めました。
このままでは授業に集中できません。
私は説明をいったん止め、教室の後ろまで歩きました。
「すみません。授業中なので、お菓子は廊下でお願いできますか」
できるだけ穏やかに伝えたつもりでした。
すると母親は少し驚いた顔をして、笑いながら返しました。
「お菓子くらい、いいでしょう。まだ小さい子なので」
小さいから仕方がない。その気持ちも分かります。ただ、目の前には授業を受けている子どもたちがいます。
「お気持ちは分かります。ただ、みんなが授業中なので、食べるときだけ外でお願いできますか」
そう伝えると、母親は返事をせず、袋の口を閉じました。
姉のいすに座った子
それで落ち着くかと思いましたが、しばらくすると、その子は母親のそばを離れて歩き始めました。
机の間を進み、児童のノートをのぞき込みます。声をかけられた子は困ったように私を見ました。
「お母さんのところに戻ろうね」
私が声をかけると、その子は姉の席まで歩き、そのままいすの端に腰を下ろしました。
一年生の姉は、何も言わずに体をずらします。一つのいすに二人で座る形になりました。
母親は止めるのではなく、スマートフォンを向けていました。
私はもう一度、後ろを指しました。
「危ないので、授業中はお母さんのそばでお願いします」
今度は母親も何も言わず、子どもの手を取って後ろへ戻りました。
授業はそのまま最後まで続けることができました。
学級通信に書けなかったこと
その日の夜、家で学級通信の下書きを開きました。
「本日は参観日にお越しいただき、ありがとうございました」
そこまで打って、手が止まりました。
参観日は、子どもたちが普段どんなふうに学んでいるかを見てもらう時間です。一方で、小さなきょうだいを連れて来ざるを得ない家庭があることも分かっています。
どちらかだけを責めるような書き方にはしたくありませんでした。
迷った末、次の一文を加えました。
「小さなお子さまをお連れの場合、授業中に休憩や飲食が必要になった際は、廊下をご利用いただけると助かります」
誰か一人を注意するためではなく、次からみんなが少し過ごしやすくなるためのお願いです。
送信前の画面を見ながら、参観日には授業だけでなく、こうした配慮まで含めて準備しておく必要があるのだと感じました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














