「転んだのに、最後まで走ってたね」運動会で転んでしまった子供。だが、観客席から自然と拍手が広がった理由
転んだあとも、立ち上がった
娘の運動会で、午前中最後の徒競走を見ていたときのことです。
娘の出番はすでに終わっていて、私は保護者席の後ろから次の組を眺めていました。そろそろお昼休みになる時間で、周りでは荷物を整えたり、お弁当の準備を始めたりする家族もいます。
スタートの合図とともに、数人の子どもたちが一斉に走り出しました。
ところが、コーナーに差しかかったところで、一人の子が足をもつれさせて転んでしまったのです。
ほかの子たちはそのまま走り続け、転んだ子だけが大きく遅れました。
先生がすぐ近くまで駆け寄りましたが、その子は自分で起き上がりました。膝についた砂を少し払うと、もう一度ゴールの方向を向きます。
「まだ走ってるよ」
先に走っていた子どもたちは、次々とゴールしていきました。
そのころには、転んだ子との距離はかなり開いていました。それでも、その子は走るのをやめませんでした。
私の前にいたお父さんが、お弁当を出そうとしていた家族に向かって言いました。
「まだ走ってるよ」
その一言で、家族ももう一度コースのほうを向きました。
すると、どこからか手を叩く音が聞こえてきました。
最初は数人だけだったと思います。
けれど、その子がゴールへ近づくにつれて、拍手は少しずつ増えていきました。
「がんばれー!」
トラックの内側に座っていた子どもたちからも声が上がります。
先生たちもコースの脇から手を叩いていました。
誰かが声をかけて始めたわけではありません。ただ、最後まで走ろうとしている姿を見て、自然に応援する人が増えていったように見えました。
ゴールした瞬間に聞こえた音
その子がゴールラインを越えると、観客席から大きな拍手が起こりました。
本人は少し照れたように先生のところへ歩いていきます。先生はしゃがんで何か声をかけ、その子の背中を軽くたたいていました。
やがて午前の競技が終わり、お昼休みの案内が流れました。
レジャーシートに戻る途中、娘が私に言いました。
「転んだのに、最後まで走ってたね」
「そうだね。よく走ったね」
私がそう返すと、娘はもう一度コースのほうを振り返りました。
運動会では順位や結果に目が向きがちです。でもあの日、いちばん印象に残ったのは、速さとは別のところにありました。
転んでも立ち上がり、最後まで走った子どもと、その姿を見て自然に広がった拍手。
お弁当を広げながらも、しばらくその光景が頭に残っていました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














