「1時間半では足りない、延長しろ」食べ放題で声を上げ続けた客。だが、スタッフの一言で状況が一変
15分待たされて、私も少しだけ不満だった
家族向けのリゾートホテルに泊まった夜のことです。
夕食は会場でのビュッフェ。料理は食べ放題で、飲み放題は別料金。
17時からと18時半からの二部制で、制限時間は1時間半と決まっていました。
私たちは後半の回でした。ところが受付が大混雑していて、名前を伝えて会場へ通されるまでに15分ほどかかってしまいました。
正直に言えば、私も少しだけ不満でした。1時間半のうちの15分は、決して小さくありません。
その気持ちを、そのまま声にしていた人がいました。
「1時間半では足りない、延長しろ」
受付のロビーで、男性がスタッフに向かって同じことを言い続けていました。
手際が悪いから入るのが遅れたのだ、食べ放題も飲み放題もその分だけ延ばすのが筋だと。
「並ばされたのは、こっちの落ち度じゃないだろう」
言っていることの半分は、私の胸の内と同じでした。
だからこそ、聞いているのがつらかったのだと思います。周りの人が足を止め、そこだけ時間が止まったようになっていきました。
静かな声が、その場の温度を下げた
スタッフの女性は、逃げも言い返しもしませんでした。まず深く頭を下げます。
「たいへんお待たせしてしまい、申し訳ございませんでした」
そして、声の大きさに引きずられないまま、はっきりと言いました。
「終了のお時間を延ばすことは、できかねます。このあとの片づけと、翌朝の準備がございますので」
ここで終わっていたら、ただの拒否でした。けれど彼女は、間を置かずに続けます。
「そのかわり、お料理とお飲み物は、私どもがお席まで先にお運びします。お待たせした分、少しでも長く召し上がっていただけるように」
できないことを、できない理由と一緒に。
できることを、その場でひとつだけ。
静かな声なのに、言葉の輪郭だけがくっきりしていました。
男性は口をつぐみ、そのまま家族の待つ席へ戻っていきました。
ロビーのざわめきが、ふつうの音に戻っていきます。
私の中にあった小さな不満も、いつのまにか消えていました。
時間を延ばしてもらえなかったのは私も同じなのに、納得だけが残っている。線を引くというのは、こういうことなのだと思いました。
席に着くと、スタッフが人数分の取り皿を手早く並べてくれました。待たされた私たちにも、同じように頭を下げてくれます。
「ごゆっくりどうぞ」
残された時間は短かったけれど、その夜の食事は、不思議なくらいおいしく感じられました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














