「男の人に変わって。女じゃ分からない。30分も待ったんだ」家電の相談窓口で強い口調だった客。だが、最初の確認で分かった真相
何度断られても、まず症状を聞くしかなかった
家電の相談窓口で、電話を受ける仕事をしていたころのことです。机の上には分厚いマニュアルがあり、症状ごとに確認する手順が決められていました。
その日の午前中、一本の電話を取りました。会社名と自分の名前を言い終えるより先に、相手の男性から強い口調で言われました。
「男の人に変わって。女じゃ分からない。30分も待ったんだ」
その日は回線が混み合っていて、長く待たせてしまっていました。苛立っているのは伝わってきましたが、症状が分からなければ担当を替わることもできません。
「まずは、どういったことでお困りかお聞かせ願えませんか」
何度か同じようにお願いして、ようやく録画機の電源が入らないのだと教えてもらえました。
電源が入らないという相談では、最初に確認する項目が決まっています。私はマニュアルに沿って案内しました。
「コンセントを一度抜いて、10秒後に差してみてください」
すると受話器の向こうで椅子を動かすような音がしました。男性が録画機のところまで移動したのでしょう。しばらく物音が続いたあと、急に静かになりました。
確認してもらっている間はこちらから急かさず、そのまま待つようにしていました。
戻ってきた声は、少し小さくなっていた
数秒後、男性の声が聞こえました。
「……コンセント、抜けてたわ」
続けて、少し間を置いてから言われました。
「悪かったね」
電話の最初とは、声の調子がずいぶん違っていました。
私は「よくあります」とだけ答えました。
実際、コンセントまわりが原因の相談は珍しくありません。掃除のときに足が当たって抜けていたり、一度外したあとに奥まで差し込めていなかったりすることがあります。
本人はきちんと差さっていると思っているので、電源が入らなくなると機械の故障を疑ってしまうのです。
だからこそ、簡単に思える確認でも省かず、決められた順番で案内する必要がありました。
電話を切る前、男性は「あんた、ずっと声が変わらないね」と言いました。どういう意味だったのかは分かりませんが、私は「ありがとうございます」と答えて電話を終えました。
受話器を置くと、隣の席の人が小さな声で言いました。
「最初の確認で終わりましたね」
本当に、その通りでした。
相手が焦っていると、こちらも早く答えを出したくなります。それでも、基本の確認を飛ばさないことが、結果的にはいちばん早いこともあります。
あの電話のことは、今でもその一例としてよく覚えています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














