「いいから持ってきてよ」飲み放題に含まれないドリンクを要求する客。だが、困り果てた私を救った店長の一言
何度も呼び止めてくる男性客
居酒屋でアルバイトをしていたころ、今でも忘れられないお客さんがいます。
その夜は店内の席がほとんど埋まり、厨房も注文に追われていました。
料理は順番に作っていましたが、普段より提供に時間がかかっていたのです。
そんな中、何度も私を呼び止めてきたのが、飲み放題付きのコースを利用していた男性客でした。
「ねえ、料理まだなの?ずいぶん待ってるんだけど」
「お待たせして申し訳ありません。順番にお作りしていますので、もう少々お待ちください」
そう説明しても、男性は納得してくれません。
ほかのテーブルに料理を運んでいると、また声をかけられました。
「あっちには料理が来てるのに、うちはまだなの?」
「ご注文の順番にお出ししているのですが……申し訳ありません」
私も料理が遅れていることは申し訳なく思っていました。ただ、自分の判断で提供する順番を変えることはできません。
それでも男性は、私が近くを通るたびに不満を口にしていました。
そして、しばらくして再び呼び止められたときのことです。
男性はメニューを開き、飲み放題の対象外になっている飲み物を指さしました。
「じゃあ、これ持ってきてよ。サービスしてよ」
「すみません。そちらは飲み放題に含まれていないので、別料金になります」
すると男性は、少し不機嫌そうに言いました。
「いや、俺、店長と知り合いなんだよ。待たされたんだから、これくらいいいでしょ」
突然そう言われても、私はどう答えればいいのか分かりませんでした。
「申し訳ありませんが、私の判断では…」
「だから、店長と知り合いだって。いいから持ってきてよ」
男性の声は周囲の席にも聞こえるほど大きくなっていました。
本当に店長の知り合いなのか、私には分かりません。かといって、勝手に無料で提供するわけにもいかず、困ってしまいました。
店長本人が男性客に尋ねたこと
ちょうどそのとき、店内の見回りを終えた店長が通路を戻ってきました。
私は店長に近づき、男性から飲み物を無料で出すように言われていることと、店長の知り合いだと話していることを小声で伝えました。
すると店長はうなずき、男性のテーブルへ向かいました。私も隣についていきます。
「お待たせしました。店長です」
男性が顔を上げると、店長は続けました。
「私とお知り合いだと伺ったんですが……失礼ですが、どちらでお会いしましたか」
すると男性は、一瞬言葉に詰まりました。
先ほどまでの強い口調とは違い、メニューに視線を落としたまま、小さな声で答えます。
「ああ、いや……前にちょっと……」
店長は少し間を置いてから、穏やかに話しました。
「そうでしたか。申し訳ありませんが、こちらのお飲み物は別料金でお願いしているんです」
「……ああ、そう」
男性はそれ以上何も言わず、メニューを閉じました。
近くの席から小さな笑い声が聞こえましたが、店長は特に気にする様子もなく、男性に軽く頭を下げました。
結局、本当に知り合いだったのかは分かりません。ただ、その後、男性が無料の飲み物を要求することはありませんでした。
店長は私の肩を軽くたたいてから、厨房へ戻っていきました。
私はほっとして、次の料理を運びに向かいました。
店長は男性を責めたり、強く言い返したりしたわけではありません。ただ本人として確認し、店の決まりを説明しただけでした。
それまで何を言っても聞き入れてもらえなかっただけに、店長の落ち着いた対応が今でも印象に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














