「どっちがいいと思う?」孫の服を選べと言われ困った私。だが、上司に対応を代わってもらって気づいたこと
孫の服を選んでほしいという電話
以前、私は子ども服の通販会社のコールセンターで働いていました。
商品のほつれや汚れについて相談を受けることが多く、交換などの案内には慣れていました。
しかし、ある日の昼にかかってきた電話には、どう答えればいいのか分かりませんでした。
相手は年配の男性でした。
ふたつの商品番号を伝えられ、パソコンで検索すると、画面に子ども用の上着が表示されました。
「あのさ、どっちがいいと思う?孫に着せたいんだけど」
私は思わず言葉に詰まりました。
お孫さんの体格も好みも分かりません。どちらが似合うかと聞かれても、簡単には答えられないと思ったのです。
「そうですね……。お孫さんと一緒に、お店で試着していただくのが確実かと思います」
すると、男性の声が少し強くなりました。
「いや、それができたら電話してないよ。店が遠いんだよ」
「申し訳ありません。ただ、こちらではどちらがよいかまでは……」
「だから、それを聞きたくて電話してるんだよ。もういい、分かる人に代わってくれ」
最後はかなり大きな声になっていました。
私は慌てて保留ボタンを押しました。困ったお客さんに当たってしまった。正直、そんなふうに思っていました。
上司が最初に聞いた、意外な質問
対応を代わってくれたのは、ベテランの女性上司でした。
上司は私の隣に座ると、ヘッドセットをつけ、画面に表示された上着の写真を大きくしました。
「お電話代わりました。お待たせしてすみません。お孫さんは男の子ですか? 女の子ですか?」
私は驚きました。そんな質問から始めるなんて、考えてもいなかったからです。
上司は相手の話を聞きながら、画面のふたつの上着を見比べていました。
「ああ、そうなんですね。だったら、私ならこっちを選びますね。動きやすそうですし、お洗濯もしやすいと思いますよ」
すると、ヘッドセットから男性の声が漏れてきました。先ほどとは違う、明るい声でした。
「そうそう、孫に似合う服が聞きたかったんだよ」
「じゃあ、それをもらうよ」
あれほど険悪だった電話が、上司に代わってからは驚くほど穏やかになりました。男性はその上着を注文することにしたのです。
電話を終えた上司は、ヘッドセットを外して私に返してくれました。
「孫の服選びってね、誰かと一緒に迷うのも楽しいのよ」
その言葉に、私はハッとしました。
男性は、絶対に似合う服を教えてほしかったわけではないのかもしれません。どちらにしようか迷っている自分の話を、少し聞いてほしかったのでしょう。
私は答えられない理由ばかり考えて、相手が何を求めているのか聞こうともしていませんでした。
それからも、あの男性からは何度か電話がかかってきました。
「今日はね、帽子で迷ってるんだよ」
私が電話に出ると、上司が隣に椅子を寄せてくるようになりました。ふたりで画面を見ながら、男性の話に耳を傾けます。
電話の向こうで楽しそうに話す男性の声を聞くたび、私はあの日の上司の対応を思い出します。
商品の説明だけではなく、相手が何を聞きたいのかを考えること。その大切さを、あの電話から教わった気がします。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














