「床に水を落とさないで!」しずく一滴で私を叱り、昼の水たまりまで私のせいにする先輩。10年の自慢が崩壊
一滴で決まりを持ち出す先輩
先輩は、床をぬらした人が自分で拭く決まりだと言いました
始業前。給湯室でいれたお茶のマグを両手で持ち、コピー機の前を通って席へ戻るところでした。
マグのふちから、しずくが一滴だけ床へ落ちました。
拭こうとした私より先に、通路の向かいの席にいた先輩が立ち上がりました。
「床に水を落とさないで!」
「床をぬらした人が、自分で拭くこと!」
部署の決まりだそうです。私は謝って、一滴を拭き取りました。
先輩は、10年床に一滴もこぼしていないと胸を張りました
50代の先輩は部署いちばんのベテランで、若手の失敗に厳しい人です。
コピー機のすぐ近く、窓ぎわの角に置かれたパキラを10年育てていて、昼休みの前に緑のじょうろで水をやるのが日課です。
その日も、じょうろを手に私を横目で見て、胸を張りました。
「水やりは私だけ。誰にも触らせない。」
「10年、床に一滴もこぼしてないわ。」
私はうなずくしかありませんでした。
昼休みの直前、先輩がいつものようにパキラの前に立ち、じょうろを傾けて水をやっている姿を見かけました。
昼休みは全員が外へ出て、部署は1時間空になります。
先輩は、コピー機の前の水たまりを私のせいにしました
昼休み明け。洗ったマグカップを持って戻ると、コピー機の前の床に、大きな水たまりができていました。先輩が私を指さしました。
「これ、あなたでしょ!」
「さっきもマグを持って通ったわね!」
奥の席の課長が振り返ると、先輩は「この子、朝もこぼしたんです」と声を張りました。
マグ1杯でこんなに、と言いかけた私の声に、「言い訳しない!」とかぶせます。
朝の一滴を見られた私の言葉は、届きそうにありません。私は言い返せず、雑巾を取りに行きました。
昼休み明けのコピー機の前
水の筋は、窓ぎわのパキラの受け皿まで続いていました
雑巾を手に水たまりの前にしゃがんだとき、ふちから細く光る水の筋がのびているのに気づきました。
筋は床を伝い、私の席とは反対の右の角へ続いています。
たどっていくと、コピー機のすぐ近くにあるパキラの受け皿が、ふちまで水でいっぱいでした。
受け皿からあふれた水が床を伝い、コピー機の前で広がっていたのです。
受け皿の横には、あの緑のじょうろ。昼休みの前にやった水が鉢底から少しずつ流れ出し、誰もいない間に受け皿からあふれたようです。
ついてきた先輩の前で、私は受け皿を指さしました。
「パキラの受け皿が、あふれています。」
先輩は、誰かが勝手に水をやったと言い出しました
先輩は目を見開き、早口で言い返しました。
「だ、誰かが勝手に水をやったのよ!」
私は、先輩の目を見て返しました。
「水やりは私だけ、とさっき伺いました。」
昼休みの前、私の前でじょうろを傾けていたのも、先輩です。
机に雑巾を置かれた先輩は、黙って固まりました
課長が席を立って来て、黙って先輩の顔を見ました。私は手にしていた、まだ使っていない黄色い雑巾を、先輩の机の端に置きました。
「床をぬらした人が、自分で拭くこと。」
10年、床に一滴もこぼしていないはずの先輩は、目を泳がせたまま動かず、ひと言も返しませんでした。
※本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














