「ボリュームを下げてくれればいいのに…」電車で音漏れしている乗客。だが、子供の無垢な一言をうけ、態度が一変
音漏れしている乗客
朝の通勤電車。微かな揺れに身を任せる、いつもの静かな時間……のはずでした。
しかしその日は、隣に座る男性のイヤホンから漏れ出す音が、あまりに激しかったのです。
「シャカシャカ、ズンズン……」
密閉された車内に、アップテンポなリズムが鋭く響き渡ります。
(うるさい。せめて、もう少しボリュームを下げてくれればいいのに…)
喉元まで出かかった言葉。
しかし、それを飲み込まずにはいられません。
最近は、些細な注意が思わぬトラブルに発展することも珍しくない時代。
周囲を見渡しても、他の乗客はスマホに目を落とすか、眠ったふり。誰もがこの不快な音を、見て見ぬふりをしてやり過ごそうとしています。
(言ったら逆ギレされるだろうか。でも、このまま我慢し続けるのも辛い。どうすればいいんだ……)
正義感と不安の板挟み。
時計を見るたびに膨らんでいく、行き場のないモヤモヤとした気持ち。そんな重苦しい空気を切り裂いたのは、目の前に立っていた小さな男の子の声でした。
「ねえねえ、おじさん!」
屈託のない、澄んだ声。
音漏れの主である男性が、ハッとして顔を上げます。
「……え、僕のこと?」
「そうだよ!おじさん、何を聴いてるの?それ、お外まで全部聴こえてるよ!」
あまりに真っ直ぐな指摘。
男の子はさらに身を乗り出して問いかけます。
「すっごく大きい音だね!何の歌? 僕も知ってるやつ?」
「こら、静かにしなさい。失礼でしょ」
横にいた母親が慌てて宥めますが、男の子の勢いは止まりません。
「だって、ずっと聞こえるんだもん!ねえ、何ていう曲なの?」
気まずい状況
無邪気な好奇心に、周りの乗客からも思わず微かな苦笑いが漏れました。
気まずそうに顔を赤らめた男性は、慌ててスマホを操作し、イヤホンを外します。
「……あ、ごめんね。そんなに響いてたかな。うるさかったね」
男性がボソッと呟くと、車内のピリピリとした空気は一変。
どこか穏やかな、温かい空気が流れ始めました。
目的地に着き、ホームに降り立った私の心。そこには、先ほどまでのイライラは微塵も残っていません。
大人が勝手に作り上げていた「沈黙の壁」を、子供の素直な一言が鮮やかに壊してくれた瞬間。
一日の始まりに、少しだけ大切なことを教わったような気がして、私の足取りはいつになく軽やかでした。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、60代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














