「あなたの実家から通勤すればいいわね」義妹の転職時に驚きの提案をする義母。だが、相談した夫の一言に心が折れた
義実家のリビングで投げられた一言
結婚していた頃の話。
義実家での夕食の席だった。
就職活動中の義妹を中心に、テーブルでは進路の話題が続いていた。
義妹はノートにいくつかの候補を書き並べ、家族で意見を出し合っている最中だった。
そのうちの一社が、私の実家のすぐ近くにあった。
義妹が「ここ、興味あるんだよね」と言った瞬間、義母の表情がぱっと明るくなった。
義母は私のほうに身を乗り出して、当然のように告げた。
「あなたの実家から通勤すればいいわね」
箸を持つ手が、止まった。
「お母さんも安心だし、家賃もかからないし、ちょうどいいわよね」
義妹は「えー、いいの?」と笑顔で乗っかっている。
義父までもが、うんうんと頷いていた。
私の実家は、定年を迎えたばかりの両親が、二人で静かに暮らす家だ。
広くもないし、義妹を泊めて世話する余裕も、義務もない。
その場で否定するのは角が立つ気がして、私は曖昧に微笑んでやり過ごした。
けれど、胸の奥はずっと重く沈んでいた。
帰りの車内で走った冷たい沈黙
夕食を終え、夫の運転する車に乗り込んだ。シートベルトを締めながら、私は静かに切り出した。
「ねえ、なんでうちの母が他人の面倒をみるの?」
義妹のことは家族として大事にしてきたつもりだった。それでも、私の両親に世話を回されるのは話が違う。
夫はハンドルを握ったまま、こちらを見ようともせずに答えた。
「他人じゃない、親戚だろ」
その軽さに、すうっと頭が冷えた。
私は短く息を吸って、はっきりと言い返した。
「は?思いやる気持ちもないなら他人です」
車内の空気が、ぴたりと止まった。
夫は何かを言いかけて、結局言葉にならず、口を閉じた。
信号待ちの赤い光だけが、フロントガラス越しに点滅している。
「親戚」と「他人」のあいだには、静かな線がある。
普段は意識しなくても、踏み越えられた瞬間にはっきりと見えてくる線だ。
義妹にも夫にも、義母にも、そこを軽く跨いでもらっては困る。
家に着くまで、夫はそのことについて二度と口を開かなかった。
彼の中で何が整理されていたのかは、今でも分からない。
後日、夫の口から義母に断りを入れてもらった。「妻の実家は、預かる立場じゃない」と。
義母は不機嫌に黙り込んだが、それ以上は何も言ってこなかった。
義妹は別の会社に就職し、両親の家からの通勤話は二度と持ち上がらなかった。
実家の母には、後日この一連のやりとりを伝えた。母は静かに頷いて「断ってくれてありがとう」と笑った。
あのとき即答できたから、両親に余計な負担を背負わせずに済んだ。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














