「平均40歳ですよ」年齢層を濁して伝えてきたバレエ教室→名簿で最高齢95歳と判明し入会を保留した
最年長の生徒さんとの会話
新しく通い始めたバレエ教室で、レッスン後に着替えていると、隣のロッカーの方が話しかけてきてくださいました。
私より40歳ほど年上、80代後半に見える生徒さんでした。
「あなた、若くていいわねえ」
そう言って優しく笑うその方は、レッスン中の動きも丁寧で、姿勢も美しい。教室の中で一番きれいに脚を上げていたのも、その方でした。
長年通っているそうで、ステップの一つひとつに迷いがありません。
少し雑談をして、教室の歴史を教えてもらいました。
10人いる生徒さんのうち、80歳以上が4人。最年長は95歳でした。受付では先生から軽い口調でこう聞かされていたのです。
「平均40歳ですよ」
その数字は、若い数人と高齢の数人で押し上げ合った結果だったと、その時ようやく分かったのです。
80代が4人いる事実を一度も口にしなかった案内に、私は黙って唇を結びました。
先生は誇らしげに「みなさん長く続けてくれている」と話していましたが、私が想像していた教室の姿とは少しずれていました。
鏡の前で耳に残った呟き
更衣室を出る間際、その生徒さんが鏡の前で髪をまとめながら、独り言のように呟いたのでした。
「20年後、私はここに残っているのかしら」
明るい声でしたが、私の足は思わず止まりました。
返す言葉が見つからず、私はただ会釈をしてその場を離れたのです。
それは決して暗い言葉ではなく、淡々とした調子の呟きでした。
けれど、新しい習い事を始めて数日の私には、受け止め方が分からなかったのです。
慰めるべきなのか、笑って流すべきなのか、その日の私には判断がつきませんでした。
電車の窓に映る自分の顔を見ながら、その声がずっと耳の奥で鳴り続けていたのを覚えています。
通うか迷っている本当の理由
家に帰ってから、その呟きが頭から離れませんでした。
教室の先生は熱心で、レッスンの中身も悪くない。先輩の生徒さんたちも親切で、馴染めない雰囲気でもありません。
(私はこの教室で、誰と一緒に20年続けるんだろう)
新しいことを学びたくて飛び込んだ場所で、まさか年齢層に立ち止まることになるとは思っていませんでした。
年配の方を否定したいわけでは全くないのです。ただ、自分のすぐ横に並んで踊ってくれる、近い世代の仲間にも出会いたかった。同じレッスンを続けて、互いの上達を笑い合いたかった、というだけなのです。
その素朴な気持ちと、教室の現実とのあいだで、私は今も通うかどうかを決めかねたままでした。鏡の中の自分に、言葉にしづらい沈黙だけが残っていたのです。来週のレッスンに行くべきか、別の教室を探すべきか、答えはまだ出せそうにありませんでした。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














