「ごめん、車に乗せてくれない?!」当たり前のように送迎をお願いするママ友。だが、ガソリン代の明細を笑顔で渡したら一変
記録をつけ始めた日
近所のママ友をやんわり断ったのは初めてだった。
「最近、車の調子が悪くて」
「直ったら教えてね!」
察してほしかった遠回しの言葉は、まるで届いていなかった。私が送迎するのは、彼女にとってもう前提なのだ。
「直ったら助かるー、ほんと頼りにしてるから」
無邪気に笑う彼女に、もう遠回しは通じないと悟った。その日から、私は送った日付と行き先、距離を手帳に書き留め始めた。腹立ちというより、自分を守るための記録だった。
いつのまにか専属運転手
始まりは、ただの雨の日だった。
「ごめん、車に乗せてくれない?!」
困っているなら、と快く送った。それが数ヶ月でエスカレートした。晴れの日も彼女は助手席が定位置で、頼みごとは確認に変わっていった。
「今日も車だよね?」
聞くというより、座る場所を確かめるような言い方だった。用事まで少しずつ増えていく。
「ついでにスーパー寄って」
「週末のイベントも、よろしくね」
お礼はメッセージのスタンプ一つきり。ガソリン代を気にする素振りすら、見せたことがなかった。
「車があると、ほんと違うわよね」
助手席で彼女がそう言うたび、私はあいまいに笑い返すしかなかった。
彼女にとって私の車は共有財産で、私はその運転担当。そういう役割が、いつの間にか固まっていたのだ。だから私は、淡々と記録だけをためていった。
明細を見せた瞬間
ある朝、彼女がいつもの調子で近づいてきた。
「来週、車出してくれるよね?」
私はためていた記録をまとめたメモを、笑顔で手渡した。日付と行き先、走った距離。そして合計欄に書いた数字。
「ガソリン代と高速代、これまでで数千円ね。これからは一回ごとに精算でいい?」
メモを受け取った彼女の表情が、みるみる固まっていく。
「……なにこれ、本気で言ってる?」
言いかけた言葉が、途中で途切れる。
「タクシーみたいじゃない」
苦し紛れの一言に、近くにいたママが静かに割って入った。
「ずっとタダで乗せてもらって当たり前、の方がおかしいと思うけど」
その場が、ほんの少しざわついた。ほかのママたちも、彼女から目を逸らさずにいる。
形勢は、もう誰の目にも明らかだった。彼女は反論をのみ込み、うつむいたまま動かなくなった。
「……今日は、もういいわ」
そう言い残して、足早に去っていった。それきり、彼女が私を運転手扱いすることはなくなった。乗せる時は、必ず一声かけてくるようになった。あの朝に味わった胸のすく思いは、しばらく忘れられそうにない。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














