「毎朝6時に窓を開けるね」一日中こちらを覗く近所の男性→日時を書き留めた手帳が私を救った
見張られていた朝
朝、私がカーテンを開けると、道を挟んだ向かいの家の窓辺に、いつもあの男性が立っていました。
年の頃は70歳ほど。
最初は日課の日向ぼっこだろうと、気にも留めていなかったのです。
ある日、ゴミ捨て場で顔を合わせたとき、彼は世間話のように言いました。
「毎朝6時に窓を開けるね」
言葉を失いました。
私が何時に起きて、いつ窓を開けるのか。その一つひとつを、彼は向かいの窓からずっと見ていたのです。
「昨日は、帰りが遅かったじゃないか」
それからは、顔を合わせるたびに、私の行動が彼の口から返ってきました。
悪気のない口ぶりだからこそ、よけいに薄気味悪かったのを覚えています。
「若い人はいいねえ、毎日忙しそうで」
ほめ言葉のはずなのに、私の外出も帰宅も、休みの過ごし方まで、すべて見られているという事実だけが、ずしりと胸に重くのしかかりました。
距離を取るために
外に出れば、いつのまにか背後に立っている。
買い物から戻れば、荷物の量を数えるように見られる。
宅配の人が来た時間まで把握されていて、次第に、家にいても落ち着かなくなりました。
郵便受けを勝手にのぞかれた形跡があった日には、指先が冷たくなりました。
差出人の名前まで見られているのだと思うと、家の中にいても、壁の向こうの気配ばかりが気になってしまうのです。
「困ったことがあったら相談してね」
その一言が、いちばん怖かった。味方だと言いながら、彼は私の生活を隅々まで見張っている。
このままでは自分が壊れてしまう。
そう思い、私は彼の言動を、日付と時刻つきでノートに書き残すことにしました。
何時にどこで声をかけられ、何を言われたか。証拠になるものを、ひとつずつ積み上げていったのです。
そのノートを持って、住まいの管理者と、公的な相談窓口に足を運びました。
「これだけ記録があれば、こちらから注意を入れられますよ」
担当者が正式に間に入ってくれてから、あからさまな声かけはようやく止まりました。
それでも、向かいの窓辺に立つ影だけは、変わらずそこにあり続けたのです。
私は結局、その土地を離れる決心をしました。引っ越しの荷物を積んだ日、最後にもう一度だけ向かいの窓を見ると、カーテンの隙間が、すっと閉じました。
今も、朝カーテンを開けるとき、あの視線をふと思い出してしまうのです。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














