「今日も一日中うるさい」隣家から3ヶ月鳴り続けた布を叩く音。だが、今までの記録を管理会社にぶつけた結果
終わらない乾いた音
その日も、朝からあの音が始まっていた。
パン、パン、と何かを叩く乾いた音が、斜め向かいの家から絶え間なく響いてくる。
最初は数日でおさまるだろうと軽く考えていた。ところが、その音は一週間たっても、二週間たってもやむ気配がなかった。
「今日も一日中うるさい」
思わず口に出た。
ビニール袋か布か、正体は分からない。
ただ、その音はいつ始まっていつ終わるのか、まるで見当がつかなかった。
「耳栓しても、振動みたいに響くのよ」
友人に電話でこぼすと、深刻さが伝わったのか、真剣に相談に乗ってくれた。
「それ、細かく記録を残すのが一番だよ」
眠りも、仕事への集中も、少しずつ削られていく。このままでは自分がまいってしまう。そう感じた私は、行動に移すことにした。
感情ではなく事実で動かす
「怒鳴り込んでやろうかとも思った」
でも、感情的にぶつかれば、こじれて長引くだけだと自分に言い聞かせた。
相手の事情も、こちらには分からないのだから。
私が選んだのは、事実を積み上げる方法だった。音が鳴り始めた時刻、続いた時間、その日の様子。
カレンダーに毎日書き込み、ときには音そのものを録音した。
数字と時刻が並んだノートは、日に日に厚みを増していった。一枚めくるごとに、これは決して私の思い込みではないと確信できた。
「これ、今までの記録です」
三か月分のメモと音声を手に、私は地域の相談窓口と住まいの管理会社に足を運んだ。
担当者は資料に目を通すと、ゆっくりうなずいた。
「これだけそろっていれば、正式に間へ入れます」
その言葉に、ずっと張り詰めていた肩の力が抜けた。
「もっと早く相談すればよかった」
一人で抱え込んでいた時間が、ふいに惜しく感じられた。
窓口と管理会社は連携し、相手の家へ穏やかに事情を確認してくれた。何があったのかは、こちらには知らされなかった。それでも、対応が始まってしばらくすると、あれほど続いていた音がすっと消えた。
音が消えてからも、しばらくは体が身構えていた。けれど何日たっても、あの乾いた音が戻ってくることはなかった。
数日、耳を澄ましても、聞こえてくるのは鳥の声だけだった。
「静かって、こんなに気持ちいいんだね」
夫の一言に、私は思わず笑ってしまった。感情をぶつけるのではなく、記録という事実で一つずつ前に進めたこと。それが、長い悩みを解く鍵だった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














