「ずっと避けてしまって、本当にごめんなさい」1ヶ月挨拶を無視し続けたママ友が、突然謝罪してきた理由とは
手を振る子と、目を合わせない母
夏休みのあいだだけ、私は自転車で子どもを幼稚園に送っていた。バスが運休になるからだ。
同じ時間に来るのは、次男と同じクラスの子と、そのお母さん。私は毎朝、笑顔で声をかけた。
「おはようございます」
けれど返ってくるのは、いつも沈黙だった。彼女は軽く目をそらし、子どもの手を引いて園へ入っていく。
その子は違った。私を見つけると、遠くからでも駆けてくる。
「ねぇ、また会えたね!」
「○○ちゃんのママ、だいすき!」
屈託のない声に、こちらまで元気をもらう。
だからこそ、隣のママの無反応がふしぎでならなかった。
子ども同士がこんなに仲良しなのだから、親の私が気まずい顔をするわけにはいかない。
それでも私は、挨拶をやめなかった。返事がなくても、笑って「おはようございます」と言う。それだけは続けようと決めていた。
「暑いので、水分とってくださいね」
返ってくるのは、やっぱり沈黙。
それでも私は、毎朝ひとつだけ深呼吸してから声を張った。無理に距離を縮めようとは思わない。
ただ、挨拶だけはやめない。それが私なりの、ささやかな意地だった。
声をかけ続けて、一ヶ月。夏休みは、ついに一度も返事のないまま終わった。
突然の謝罪と、赤くなった耳
二学期が始まった朝。園庭の前で、あのママが私の前に立ちふさがった。
「実は人違いしてて」
絞り出すような声だった。彼女は私のことを、まったく別の人と思い込んでいたらしい。
以前もめごとがあったママと、顔立ちがよく似ていたのだという。
「ずっと避けてしまって、本当にごめんなさい」
その場に居合わせた別のお母さんが、思わず吹き出した。
「え、あの人と全然違うじゃない。ひとりで気に病んでたの?」
指摘された彼女は、耳まで赤くしてうつむいた。あれほど固かった横顔が、みるみる崩れていく。しまいには、逃げるように私からそっと目を伏せた。
「毎朝ちゃんと挨拶してくれてたのに、私、失礼なことを……」
まわりのママたちも、ほっとしたように顔を見合わせている。責める空気ではなく、張りつめていたものが一気にほどけていく感じだった。
一ヶ月もの無視の正体が、たったひとつの思い込み。拍子抜けするやら、おかしいやら。
「謝ってもらえて、すっきりしました。これで気持ちよく挨拶できます」
私がそう返すと、彼女はもう一度、深く頭を下げた。翌朝からは、彼女のほうが先に「おはようございます」と声をかけてくるようになった。目が合うたびに小さく会釈する姿は、あの夏の無表情とは別人のようだった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














