彼「俺、お前のこと大事にしてるよ」→「子供が、できたかもしれない」と告げた時の彼の一言に別れを決意
未練という名の鎖
「今夜は会えないんだ。また連絡する」
彼からのメッセージは、いつも同じような言い訳で締めくくられる。返信は遅く、内容は短い。
長く連れ添った相手だからこそ、その変化が何を意味するのか、私には痛いほど分かっていた。
浮気を疑いながらも、私は彼に問い詰めることができなかった。決定的なことを言えば、本当に終わってしまう。
この歳になって一人になる怖さと、まだ残っている情とで、私はずるずると関係を続けていた。
「俺、お前のこと大事にしてるよ」
そんな言葉で彼は私を引き留め、けれど決して核心には触れさせなかった。
私はそのたびに自分を騙し、見て見ぬふりを重ねていた。同年代の友人は、もっとさっぱりしていればいいのにと心配してくれたが、それができれば苦労はしない。
かまをかけてみた夜
ある夜、二人で食事をしているとき、彼が席を立った隙にスマホが短く震えた。
画面は伏せられたままで、彼は戻るなりそれをポケットにしまった。その何気ない仕草を見て、私はとっさに思いついた。少しだけ、彼を揺さぶってみよう。本当の顔が見たかった。
「ねえ、聞いてほしいことがあるの」
「ん、どうした」
「生理が遅れてて。子供が、できたかもしれない」
口にした瞬間、彼の表情が凍りついた。
喜びでも戸惑いでもない。明らかに、面倒なことになったという顔だった。彼は視線を落とし、しきりに指で膝を叩いている。
「えっ、いや、それって本当に?」
「まだ分からないけど。だから一応ね」
彼は何か言いかけては飲み込み、言葉を探していた。そして、考えなしに、こう続けてしまったのだ。
自分の口で暴いた本性
「他にも同じこと言ってきた人がいてさ」
あまりに自然に出たその一言で、すべてが繋がった。
私以外にも、彼に「子供ができたかも」と告げた女性がいる。彼の浮気は、もう疑いではなく、彼自身が認めた事実になった。揺さぶるつもりで放った一言が、思いがけず彼の本性を引きずり出していた。
「へえ。それ、誰のこと?」
私が静かに尋ねると、彼はぴたりと黙り込んだ。顔から表情が抜け落ち、それから自分の失言に気づいて口元をわななかせる。
最後は、決まりが悪そうに私から目を逸らした。さっきまでの言い訳の勢いは、どこにもなかった。
「あ、いや、今のは違くて」
「ううん、ちゃんと聞こえたよ。ありがとう、はっきりして」
不思議なほど、心は凪いでいた。あれだけ私を縛っていた未練が、彼の一言で根こそぎ消えていた。
私は静かに荷物をまとめ、もう振り返らなかった。引き止めようと伸ばされた手は、宙で行き場をなくしていた。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














