「たかが干物で大げさな」クサヤを炙る隣人。だが、管理組合が一喝した結果
洗濯物に染みつく匂い
マンションの隣室に住むお隣さんには、週末になると欠かさない習慣があった。
ホットプレートや七輪、バーベキューコンロを持ち出して、ベランダで何かを焼くのだ。煙とともに、強烈な匂いが我が家へ流れ込んでくる。
お隣さんは、なぜか毎週のように干物の「クサヤ」を炙っていた。
あの鼻を突く匂いが、干したシャツにもタオルにもしっかり染みつく。
友人を家に招いた日には、部屋にこもった匂いに気づかれないかと冷や冷やした。
「せっかく洗ったのに、また変な匂いがする……」
晴れた日でも、うかつに布団を干せない。窓を開けたいのに開けられず、休みのたびに部屋を閉め切って過ごすのは、思った以上にこたえた。
たまりかねて管理会社に相談し、通達も出してもらった。それでもお隣さんの週末の炙りは、ぴたりとも止まらなかった。
次の土曜には、また同じ煙が流れてくるのだ。
住民が動いた週末
ある週末、ベランダで七輪に火を入れるお隣さんに、私はたまらず声をかけた。
「洗濯物まで匂うんです」
そう伝えても、お隣さんは網の上のクサヤから目も離さなかった。
「たかが干物で大げさな」
まるで取り合ってもらえず、私はその場に立ち尽くした。
一人で言っても無駄なのだと、思い知らされた。悔しさで、しばらく言葉が出てこなかった。
そこで私は、同じように悩んでいた住民たちと連名で、管理組合の理事会へ正式に相談した。
匂いが流れてきた日付を、記録として添えて。
理事会の動きは早かった。ベランダでの火気使用と近隣への臭気は規約違反にあたると、理事長がお隣さんへ書面できっぱり通告したのだ。
その通告の場に、私も立ち会った。記録の束と規約を突きつけられたお隣さんは、言葉を失った。
「おおげさな…」
かすれた声でそれだけ言うと、あとが続かない。
いつもの強気はどこへやら、言い訳をのみ込むように口をつぐんだ。周りに集まった住民たちの視線から、そっと目をそらす。
「うちもずっと、あの匂いに耐えてたんですよ」
年配の女性がそう口を開くと、ほかの住民も静かにうなずいた。困っていたのは、私一人ではなかった。
あの週末以来、隣のベランダから煙が上がることは一度もない。窓を開け放って干した洗濯物は、久しぶりに日なたの匂いしかしなかった。取り込むときの、あの安心感といったらなかった。
今ではお隣さんは、廊下で私を見かけると先に目をそらすようになった。匂いに怯えない週末が、ようやく戻ってきたのだ。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














