「材料費なんて数百円だろ」無くしてしまった妻からもらった手作りバッグ。だが、レシートを見た夫が驚いたワケ
夫のために作った観戦バッグ
私は昔から手芸が好きで、休日になるとポーチやバッグを作っていました。
ある年、夫婦で応援している地元球団の試合へ行くために、夫専用の観戦バッグを作ることにしたのです。
夫がそれまで使っていたバッグは、タオルや応援グッズを入れると中身がごちゃごちゃになり、飲み物も倒れやすいのが悩みでした。
そこで私は、荷物に合わせて型紙から作り、内側にいくつものポケットを付けました。
ペットボトルを立てて入れられる仕切りや、持ち手が傷みにくいように芯も入れています。
表地に選んだのは、球団カラーによく似た限定柄の生地でした。
すでにメーカーでは生産を終えており、近隣の手芸店も軒並み完売。
ようやく見つけた店に残っていた最後の生地を、必要な長さだけ購入しました。
一般的な無地の布よりかなり高価でしたが、夫が試合へ持っていく姿を想像すると、惜しいとは思いませんでした。
完成までにかかったのは、仕事から帰ったあとの時間を使って一週間ほど。
バッグを渡すと、夫は何度も裏表を眺めながら喜んでくれました。
「これ、すごく使いやすい。売っている物みたいだな」
その言葉がうれしくて、苦労して作ったかいがあったと思っていました。
「また作ればいい」と言われて
ところが、数回目の観戦に出かけた日のことです。
帰宅した夫の肩に、あのバッグがありませんでした。
「バッグは?」
私が尋ねると、夫はそこで初めて気づいたように、自分の周りを見回しました。
どうやら試合後に立ち寄った店か、帰りの電車に置き忘れたようです。
財布やスマートフォンは服のポケットに入れていたため、バッグがないことに気づかなかったといいます。
すぐに店や鉄道会社へ問い合わせましたが、その日は見つかりませんでした。
落ち込む私に、夫は気まずそうに言いました。
「悪かったよ。でも、また同じような物を作ればいいだろ」
「あの生地はもう売っていないの」
「似たような布ならあるだろ。材料費だって数百円くらいじゃないのか」
悪気なく口にしたのでしょう。しかし、材料を探した時間も、縫い上げるまでの手間も軽く見られたようで、私は悲しくなりました。
レシートに記されていた金額
私は手芸用品を保管している箱から、購入時のレシートを取り出しました。
表地だけでなく、裏地、接着芯、ファスナー、金具、保冷用のシートなどをまとめて買ったときのものです。
「これが、あのバッグに使った材料」
夫は差し出されたレシートを見て、驚いた顔をしました。
「材料だけで、一万円近くかかっていたの?」
限定柄の表地が高かったことに加え、丈夫に仕上げるための部材をそろえた結果、材料費は夫が想像していた金額を大きく上回っていました。
「それに、型紙を作るところから始めて、一週間くらいかかった。値段だけの問題じゃないの」
私がそう伝えると、夫はしばらくレシートを見つめたまま黙っていました。
やがて、小さな声で言いました。
「簡単に作れるものだと思っていた。本当にごめん」
その後、夫はもう一度、立ち寄った店や駅へ連絡し、遺失物として届け出も出しました。しかし、バッグが戻ってくることはありませんでした。
同じ生地は手に入らないため、まったく同じ物を作ることもできません。
それでも後日、夫は私と一緒に手芸店へ行き、新しいバッグに使う生地や部材を一つずつ選びました。
値札を見ながら、「金額だけじゃなく、作る時間もかかるんだよな」と確認する夫の姿に、ようやく私の気持ちが伝わったように感じました。
なくしたバッグは戻りませんでしたが、それ以来、夫が私の手作り品を「簡単に作れる物」と扱うことはなくなりました。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














